診療報酬2010改定こうみる(1)/入院外

診療報酬2010改定こうみる(1)/入院外

許せない「勤務医支援」口実の財源シフト

理事長 関 浩

 09年11月11日、行政刷新会議の事業仕分けで財務省は、「開業医の報酬を勤務医と公平になるように見直す」ことを狙った資料を提出、仕分け人は鵜呑みしてそのまま結論とした。医科外来の改定については、結局、財務省主導の改定が行われてしまった。

 今回の改定では、初めて入院と外来で別々に改定率が定められ、外来改定率は0・31%、約400億円に止まった。

 全科にわたり大きな影響があるのは、再診料の改定である。12月16日の中医協小委で、診療側と支払側が点数統一を合意したが、具体的な設定では主張が折り合わず、2月10日に公益側から69点に統一する案が提示され、決定された。診療所マイナス2点200億円のうち、病院プラス9点180億円が財源シフトされ、20億円がその他の改定に回された。プラス改定にも関わらず診療所の再診料を引き下げるのは道理がない。

連絡先を記載した文書配布等が求められる地域医療貢献加算

 一方、診療所の再診料に地域医療貢献加算(要届出)3点が新設された。再診の都度算定可能で、電話再診でも加算できる。表示診療時間以外に患者・家族等から電話等により意見を求められた場合、対応できる体制を整備。緊急時対応体制、連絡先等について院内掲示、連絡先を記載した文書の配布、診察券への記載等の方法により、患者への周知が求められる。届出に実績は不要で、4月14日までに届け出て受理されれば、4月から算定できる。

 外来管理加算の5分間ルールは撤廃されたが、新たに「多忙等の理由により、投薬のみ要請され、簡単な症状確認等を行うのみで継続処方を行う場合は算定できない」要件が追加された。

 医学管理料に8つの点数と5つの加算が新設された。そのほとんどは、医療機関間の連携を評価したものだ。脳卒中、大腿骨頸部骨折に関するクリティカルパスに基づき、回復期の入院を経て、退院後に在宅等で担当する医療機関の対応を評価した、地域連携診療計画退院時指導料(2)(要届出)が、ようやく新設されたが、診療情報提供料(1)を含んで300点という低点数である。

 後期高齢者診療料を2年で廃止する一方で、生活習慣病管理料が後期高齢者にも算定できるようになった。薬剤情報提供料の手帳記載加算が全年齢で認められたが、算定要件が「患者の求めに応じて」になり、手帳を持参しなかった患者にシール等を交付した場合は算定できないこととされた。

 検体検査は前回改定のような全面的な引き下げではないが、生化学的検査(1)の包括点数や汎用検査の一部が引き下げられた。一方、細菌培養同定検査、細菌薬剤感受性検査、抗酸菌分離培養検査等が引き上げられた。エックス線ではアナログ撮影の評価が下げられた。手術は急性期病院で行われる技術の多くが大幅に引き上げられたが、外来で実施できる汎用点数はほとんど据え置かれた。

後発医薬品使用促進で保険医に新たな負担

 投薬に関しては、療担規則に「患者が後発医薬品を選択しやすくするための対応に努めなければならない」とする一文が追加された。具体的には「診察時に後発医薬品の使用に関する患者の意向を確認する」「保険薬局において後発医薬品に変更して調剤することや後発医薬品の使用に関する相談の対応等が可能な旨を患者に伝える」という例を示している。

 また、保険者での医科レセプトと調剤レセプトの突合に資するため、処方せんに医療機関コード等を追記するよう、様式が改定された。さらに、後発医薬品使用促進のため、調剤薬局において、処方医に確認することなく、(1)変更後の薬剤料が変更前と同額又はそれ以下の場合、含量規格が異なる後発医薬品の調剤を認める、(2)類似した別剤形の後発医薬品の調剤を認めることとされた。医師が、(1)(2)の変更に差し支えがあると判断した場合、処方せんの銘柄名の近傍に「含量規格変更不可」や「剤形変更不可」と記載することにされた。

 これらは、全て保険医に新たな負担のみを課す改定で、報いる点数は全くない。財務省は、これら後発医薬品使用促進策で、医療費国庫負担187億円の軽減を狙っている。非常に問題がある改定だ。

電子請求を行う医療機関に明細書の発行義務化

 療坦規則の改定では、電子レセプト(オンライン又は電子媒体)請求が義務づけられている医療機関は、現在発行している領収証に加えて、個別の点数項目の分かる明細書の無償発行が義務づけられた。京都府保険医協会は現在、撤回を求めて運動している。会員各位におかれては、ご協力いただきたい。(付録参照)

 明細書は、一部負担金の生じるすべての患者に対して、領収証とともに発行しなければならない(患者が希望しない場合や明細書発行機能が付いていないレセコンの場合を除く)。今回、義務化の対象となる医療機関だけでなく、対象とならない医療機関も、明細書発行に係る院内掲示等が必要になる。

 患者に行った医療内容の説明は必要であるが、明細は保険者がレセプトを無償で開示すれば良いのであって、我々が説明する義務はないと考える。明細書発行の義務化は、医療機関窓口での混乱や望まない病名告知、個人情報の漏えいなど、大きな問題につながる。

 なお、診療所の再診料に明細書発行体制等加算1点が新設されたが、事務対応の煩雑化に報いるものではない。

次回改定も再診料、外来管理加算がターゲット

 診療所に関する外来点数の改定を見ると、全体として評価されたとは言い難い。再診料の引き下げが大きく問題となったが、療担規則の改定など新たな負担も課せられた。

 中医協の答申の付帯意見では、再診料、外来管理加算のあり方について検討を行う、とされており、次回改定でもターゲットとされるのは必至である。次回医療・介護の同時改定を見据えて、保険医と国民が共に喜べる「療養の給付」を要求し、取り組んでいきたい。

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