自由詩コーナー

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谷口 謙 選

 黒い船

加藤善郎

凝らした目に入ってきた水平線
それに乗っかっている二つの船
白い船は早や遠ざかり
やがて沈み始めた太陽
赫々たる紅にいつしか紛れ
やゝあって代った残光に
しばらくは浮かび出た船影
ずーっと遠い沖合に在ったんだ
悠々と動いていたんだ
ソマリア沖もマラッカ海峡も
こともなく超えて来たんだ

 星座図鑑(72)じょうぎ座

m.

ぴったりと当てても
なんか狂っている
そんな
貴方を
科学者は愛しているのです

早春の森

門林岩雄

ソンナトコカラ
ノゾイテナイデ
デテオイデ
フキノカゲカラ
デテキテ
ハナシテチョウダイ
アナタノクニノ
クラシノヨウスヲ
砂漠の虫
砂嵐の舞う
砂漠にも
虫がいる
穴にひそみ
嵐の去るのを
じっと待つ

敵が来ると
逃げて逃げて
逃げおおす
これしか生きる
道はない

嵐の去った夜
星がきらめき
歌いだす
これを聴きつつ
かれらは眠る

 「西脇順三郎氏が詩の中で表現している。実際、現実の何でもない風景、場面を表現したその言葉に作者の日々の暮らしと思いが影を落とし、行間に想像をかきたてる空気が漂っている」(山崎陸男)

 西脇氏の詩には、若かりし頃さんざん傾倒しました。荒地詩人の全盛期でしたが、「荒地詩集」と併読し感動したのをありありと覚えています。氏のモダニズムが終わりには枯れの世界に入りましたね。北陸の故郷の小都市で死亡。

<応募要領>◇字数:原稿用紙1〜1枚半◇未発表のもの。応募作品は返却しません◇住所、氏名、電話番号明記。ただし作品はペンネームで結 構です◇送り先:協会保険医新聞担当◇毎月20日締切◇第1席入選者には図書カード贈呈◇作品の発表にあたり選者が添削する場合があります。あらかじめご 了承下さい。

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