自由詩コーナー

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谷口 謙 選

帰郷

加藤善郎

山が見えた
山があった
海が見えた
海があった
あのときの
里もあった
小さな城下町
何十年かが経ったはず
ときが止っていたのだ
両眼から泪が落ちた
止めようもなく
滂沱と落ちた

星座図鑑(68)りゅうこつ座

m.

いや
日本からはみえないですよ
はるか南の出来事ですから

凪いでいる海
水平線をじっとみる
みてるが
なにも見えない

当たり前だよね
ただ
はるか南で大変なことになっている事実がある

食欲の秋

門林岩雄

カマキリさん
どんな味?
道で干からびた
ミミズの味は

秋の蝶
よろめいて蝶は
柵にとまった
破れた羽を
だらりと下げて

秋の道
坂道をのぼっていく
両脇に色づいて銀杏
上にいわし雲の空


つゆくさの道
潰えた夢

 「詩を書いていても1円にもならないのに、どうしても詩を書くのか、と問われる。それは詩を推敲する過程が、私の人生を深め、切り開いてゆくことに似ているからだと思っている」(吉久隆弘 全詩集)

 秋は郷愁の季節です。美しいが残酷な自然があり人生があります。秋の夜、好きな詩人の作品をひもとく時、晩秋を自身に重ねて索漠とした思いに重ねたく思います。もう余り時間がない。だが私は皆様方の詩を読んで幸福です。

<応募要領>◇字数:原稿用紙1〜1枚半◇未発表のもの。応募作品は返却しません◇住所、氏名、電話番号明記。ただし作品はペンネームで結構です◇送り先:協会保険医新聞担当◇毎月20日締切◇第1席入選者には図書カード贈呈◇作品の発表にあたり選者が添削する場合があります。1月は休載します。

【京都保険医新聞第2664号_2008年11月10日_3面】

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