脳卒中後遺症・認知症の対象除外は何だったのか 障害者施設等入院基本料等の改定を振り返る/上

脳卒中後遺症・認知症の対象除外は何だったのか
障害者施設等入院基本料等の改定を振り返る/上

 「障害者施設等入院基本料(以下「障害者病棟」)」などにおける脳卒中後遺症・認知症の患者に対する取扱いが08年10月に変更され、すでに1年が経過した。これは、脳卒中後遺症等による重度肢体不自由者などが入院できる慢性期病床を、縮小したことに他ならない。障害者病棟は、主として重度の肢体不自由者や脊髄損傷等の重度障害者、重度の意識障害者が入院する病床として診療報酬点数表上位置づけられている。この障害者病棟を算定するには、重度肢体不自由者など対象となる患者を一定割合(7割)以上入院させておく必要がある。しかし、08年10月改定は、その対象から脳卒中後遺症・認知症を主たる傷病とする患者は除外するというものであった。この障害者病棟を算定している、あるいは算定していた病院を取材し、改定が与えた影響と現状を聞き、改定の意味を追ってみた(2回にわたり掲載予定)。今回は西京都病院(西京)に話を伺った。

該当患者確認

 西京都病院は、阪急京都線の桂駅にほど近い京都市西京区の東部に位置し、地域密着型の医療を提供している病院である。病床数は199。うち120床(2病棟)が障害者病棟である。

 改定の影響を尋ねてみると「ほぼなかった」と担当者は話す。なぜ影響がなかったのかよく聞くと、10月改定よりも前、08年8月に、それまで「特殊疾患病棟入院料」を算定していた病床をすべて障害者病棟に転換し、その際、10月改定に対する「準備」も合わせてできていたからだという。ここでいう「準備」とは、入院患者が障害者病棟の対象患者となるかどうかの確認作業を指す。結果「当院には元々脳卒中後遺症や認知症の患者が多数を占めていたわけではなく、幸い入退院など患者の調整までは必要なかった」という。

意識障害への工夫

 一方「それまで意識障害については、JCS(Japan Coma Scale)を用いて評価していたが、GCS(Glasgow Coma Scale)を積極的に用いるようにしたところ、実際、JCSでは対象とならなかった患者が、GCSでは対象となったという例が一定数あった」という。障害者病棟を保持するため、対象患者に該当するかどうかの判断では「意識障害についてはその病因が脳卒中後遺症・認知症に起因する場合であっても対象となる」という厚労省の疑義解釈をうまく利用した、病院としての工夫といえる。

施設基準の維持

 障害者病棟を届出、受理されても、当該入院料の施設基準は当然のことながら維持し続けなければ、算定は不可能となってしまう。10月改定を乗り越えながらも「対象患者の確認、対象患者の割合の維持など基準を維持していくのは大変なこと」と担当者は話す。

医学的根拠はない

 改定内容については「脳卒中後遺症や認知症の重度肢体不自由などを他の疾患のそれと区分することに医学的根拠があるとは思えない」という。なぜこのような改定が行われたと思うかを尋ねると「社会的入院を減らしたかったのではないか。実際に社会的入院と思える患者はいる。しかし地域に密着・連携し、患者を主体とした医療を提供しようと思えば、社会的入院であっても受け入れなければならない場合も多い」と担当者はいう。「社会的入院」ということばが用いられるようになって久しいが、医療機関や患者などにその原因を押し付け、問題を矮小化するのではなく、社会や医療を取り巻く環境が変わらなければ根本的な解決にならないということを意味しているようである。

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