第61回定期総会決議

第61回定期総会決議

 病院崩壊がクローズアップされる一方で、医療システム全体の危機が進行し、病院勤務医だけでなく開業医にも疲弊感が広がっている。我が協会の新規開業会員へのアンケートでも、「病院勤務のあまりの激務に限界を感じて開業したものの、勤務医時代以上の長時間労働、職員管理、収入の低下など勤務医時代とは違う困難を抱えることになった」という声があった。

 医療崩壊ということばが当たり前に受け止められている今日の危機をもたらしたのは、政府による長年の医療費抑制政策だが、小泉政権以降強力に押し進められた新自由主義に基づく構造改革が、これに拍車をかけたことは間違いない。

 構造改革は格差と貧困を顕在化させ、多くの国民が望む普通の人間的な暮らしを破壊しかねないところまで社会構造を変えつつある。本来であれば、それを食い止めるべき社会保障制度が壊され、その影響は、医療のみならず日本社会の今後に大きな困難をもたらしかねない。

 しかし、我々医療者と国民は、この構造改革の落とし子ともいうべき後期高齢者医療制度について、施行2カ月で早々に運営改善策を決めざるを得ないところにまで政府を追いつめている。また医療崩壊の元凶の一つである医師不足問題についても、ようやくその重い口から不足を認める発言を引き出した。

 しかし、それでもなおまだ福田政権は、社会保障費自然増を5年間で1・1兆円削減するという小泉政権以来の方針について、転換するとは言っていない。後期高齢者医療制度も、今出されている運営改善策では、総枠抑制が働く制度の根幹部分は、残されたままである。問題を根本から解決するには、この構造改革路線からの国政の転換以外に道はない。

 私たちは、そのことを多くの国民に訴え、社会保障が国民の幸せを支えるあたり前の制度として機能し、安心して暮らせる社会を実現するために力を尽くすことを決意し、以下のように決議する。

1、憲法25条の理念を具体化する社会保障基本法を制定すること
1、社会保障にふさわしい医療・年金・介護・福祉制度を確立するため、社会保障財源を確保すること
1、医療費総枠の拡大により保険でよい医療が提供できる診療報酬体系を確立し、「医療崩壊」を止めること
1、後期高齢者医療制度は廃止すること
1、医療のIT化促進にあたっては、医療関係者の意向を十分に反映し、レセプトオンライン請求の義務化は撤回すること
1、介護保険制度に対する公費負担を拡大し、だれもが安心できる介護保障を実現すること
1、医師の労働実態の把握に努め、労働条件の改善と医師不足の解消により医療の安全と地域医療の確保に努めること
1、主治医の主体性・裁量の尊重と医学的根拠に基づいた審査と公正な指導・監査体制を確立し、指導・監査の強化は行わないこと
1、医療に関わる消費税は、「損税」を解消するためゼロ税率を適用すること    1、平和を希求し、核兵器廃絶と地球環境の保全を推進すること

2008年7月19日
京都府保険医協会
第61回定期総会

【京都保険医新聞第2650号_2008年8月4日_2面】

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