福山哲郎外務副大臣・浅岡美恵気候ネットワーク代表にきく 地球温暖化対策のいまとこれから

福山哲郎外務副大臣・浅岡美恵気候ネットワーク代表にきく
地球温暖化対策のいまとこれから

福山哲郎氏
福山哲郎氏 外務副大臣・参議院議員
1962年生まれ、同志社大学法学部卒業、京都大学大学院法学研究科修士課程修了、98年参議院議員に、09年外務副大臣

浅岡美恵氏
浅岡美恵氏 気候ネットワーク代表
1947年徳島県生まれ、70年京都大学法学部卒業、72年弁護士登録。最新の共著に『低炭素経済への道』(岩波新書)

飯田 哲夫理事(進行)
飯田 哲夫理事(進行)

垣田 さち子副理事長
垣田 さち子副理事長

 垣田 私たち保険医協会は、命をもっとも大事にしなければいけない医師の立場から戦争には反対だということ、同じ意味で環境を大事にしていかなければいけない、それは医師の使命だということで環境問題にも取り組んでいます。本日は、地球温暖化問題で活躍しておられるお二人に来ていただきましたので、ぜひ今日的なお話をしていただきたいと思います。

COP15で見えた課題

 飯田 まずは昨年末のCOP15注1)について。

新たな局面で臨んだ会議

 福山 非常に大きな期待の中で、各国の首脳が集まった会議でした。厳しい交渉でしたが、結果としてコペンハーゲン合意は、次へ繋がる一歩になったと思っています。今回の交渉は新たな局面がいくつかありました。まず一つ目は、政府代表団にNGOの方に入ってもらったことです。気候ネットワーク、WWFジャパンからお一人ずつ来ていただきました。

 二つ目は、非常に明確に政治的な意思をもって会議に臨んだことです。これまでは調整型の各省庁の代表が交渉団として出席し、ある程度了解できる範囲の中でしか主張できなかったのですが、今回は、小沢環境大臣と私もその交渉の場にいて、単なる調整にとどまらない主張をすることができました。

 三つ目は、最後まで全く結果が見えない中で、最終日の前夜10時から二十数カ国の首脳が一堂に会して十余時間にわたる議論を延々と続けて、合意に結びつけたことです。国際会議は一定の結論まで事務方がまとめて、残る課題の二つか三つを政治決断して最終日にまとめるというのが普通ですが、最終日まで各国の首脳が膝を突き合わせて、条文の一つ一つについて議論をぶつけ合って、まとめられました。

気温上昇2℃以内を共有

 浅岡 COP15で2013年以降の包括的国際枠組み合意を目指して、できなかった大きな要因の一つが、先進国側の仕事ができていないと言われた点が二つあるわけです。一つは先進国自身の削減目標がまだ十分ではないという点。もう一つは途上国の削減支援、あるいは未来に対応する適応策のための安定的な仕組みができていないという点。そこが先進国と途上国の間の対立点で、単なる対立というよりも、その幅が大きくて届かなかった。これは先進国側の宿題でもあると思うのです。

 一方で、地球規模での気温上昇を2℃に止めることを、共有することになりました。2℃というのは、生態系そのものが破壊されていくターニングポイントであり、経済も破綻する分かれ道だと皆が認識したのです。これを共有すれば、必然的にそこに至るプロセスはおよそ合意できるはずです。しかし、具体的な自国の目標や行動として確認する場合に、今のギャップがある。そういう意味で、道筋は良く認識しているけれども、そこに至る知恵がいる。その議論もアイデアも尽くされていないのが現状です。

 国会審議の中で鳩山首相も強調されるのですが、京都議定書注2)とは別の、アメリカも中国も入った一つの包括的な新たな枠組みができることを前提としています。これが途上国と先進国との間の大きな争点の一つでもあるのです。アメリカや中国が十分な行動をとらない時になぜ日本がやらなければいけないのかという産業界の主張は良くわかるのですが、理想的にならない限りはゼロだということをあまり強く出すと、前人未到なことに挑戦していこうとしている一員としてふさわしいのかという議論が起こるわけです。

 飯田 COP15について、浅岡さんは2℃の共有が到達点だと言われましたが、福山さんの評価は。

次のステップへ認識共有

 福山 京都議定書はアメリカが離脱をして、中国には削減義務がありませんでした。世界のCO2排出量の40%を排出している両国が、京都議定書の枠だと全くコミットする状況にないわけです。しかし今回、COP15を前に、この2カ国がそれぞれの国の主張の範囲内とはいえ初めて、アメリカは2020年までに05年比17%削減、中国は2020年という期限を区切って原単位とは言いながら40〜45%削減を表明しました。この2カ国が削減行動を国際社会に表明し、インドやブラジルや南アフリカも含む新興国がコペンハーゲン合意に対して賛同の意を示しました。全く義務のかからなかった途上国が削減行動を起こすということにコミットしたことについては、私は大きな前進であったと思いますし、これが評価の1点目です。

 2点目は、その中で明らかになってきたことですが、もう途上国は一枚岩ではないということです。97年の京都議定書の時はG77+中国という途上国がほぼ一枚岩で、先に豊かさを享受している先進国がまず責任を果たしなさいとの主張を展開していました。そのため先進国の中で第一約束期間で何%削減をするかという交渉が行われたわけです。しかし今回は、先進国間のそれぞれの思惑だけではなく、中国・インド・ブラジル・南アという新興国と、もう一方で島嶼諸国のように気候変動に脆弱で、非常に貧しい人たちがたくさんいる国々との間で、完全に思惑がぶつかるようになりました。気候変動交渉が、新しいルールに基づく土俵に変わったということです。最終的にコペンハーゲン合意は、「テイクノート(留意する)」というかたちでCOP決定になりませんでした。このことをとらえてマイナスの評価もされます。しかし、これは国連のコンセンサス方式の限界と、プレーヤーが京都議定書の時とは大きく変化した結果だと思っており、COP16以降の次のステップに向かうことに対して、各国が本当に認識を共有したということだと考えています。

すでに動き始めた経済

 福山 3点目は、新たな枠組みの議論を通じて、これまで直接的に需要やニーズのなかった途上国に、省エネ・新エネの技術やCO2を出さないような街づくりをするという需要が世界中で起こりつつあるということです。このことは先進国を中心とした、技術を持ち、世界のマーケットシェアを拡大しようとする経済競争の舞台として、この気候変動が入ってきたということです。生態系の破壊を食い止めるために気温上昇を2℃以内に止めるという命題と、その中でそれぞれが技術革新を促し新しい商品を開発することで、新たな地域づくり、ライフスタイルの転換のモデルづくり競争が始まったというのが、私なりのコペンハーゲン合意の評価です。

COP16に向けた動き

 飯田 次のメキシコでのCOP16に向けて、今後の世界の動きと、日本はいったいどう動くべきなのか。

国内議論が重要なとき

 浅岡 世界の主要国の心ある国は、京都議定書の2012年までの約束事と次の約束事との間に空白期間を設けてはいけないという思いを強く持っています。なぜかと言うと、炭素排出に価格づけをすると削減意欲を引き出す起動力にもなり、それにより経済的にも報われるというもとで削減技術や社会の仕組みが生み出されるという経験をここ数年、EUの排出量取引や再生可能エネルギーの固定価格買取制度の導入などで経験してきています。それは続ける必要がある。

 しかし、2012年まで2年半しか残っていません。コペンハーゲン合意の基本枠に沿ってすでに約120カ国が削減目標などを申し出ています。削減義務としてではないけれども削減行動を申し出ている途上国を含めて、排出量の8割以上を占める世界の大半の国々が動いています。これを法的な仕組みにつなげていくことについては、途上国への資金支援についての合意など、難しい話になっていくと思います。

 大事な点は国際約束ができて、それを各国が国内制度とするための手続きが必要なわけです。京都議定書の場合は発効までずいぶん時間がかかりましたが、今回は合意ができれば即、批准、発効と、これからの2年半で綱渡りのようなことができるかというのも大きな関心事です。特に先進40カ国の大半の国は、国内制度づくりが今先行していて、それが遅れているのが日本とロシアです。現在国内で行われている地球温暖化対策基本法の議論は本当に重要です。急がなければならないし、中途半端にしてはいけないのです。

 飯田 国際的な場での日本という視点で。

重要性増す日本の役割

 福山 第一に、日本の置かれた立場についてですが、昨年の国連気候変動サミットで鳩山総理が25%削減の演説をして以降、続けざまに鳩山イニシアチブを発表し、コペンハーゲン会合でも鳩山総理は二十数カ国の首脳会合に10時間以上座って交渉に入られました。私はその現場にて、いかに各国が内容の確認を日本との間で行いながら交渉していたかを見ていました。マスコミがよく言うような「日本孤立」ということは全くありえません。これまで全く当事者能力のなかった日本政府が、間違いなく、この気候変動の国際交渉の中で主要なプレーヤーの一員として認知されているわけです。この変化を日本政府はもう少し自覚しなければいけません。最近、各国の要人が来日されると、特に外交担当者と気候変動担当者は必ず環境大臣や私のところに、日本の動向を確認しにきます。

 コペンハーゲン合意後の状況としては、国際社会が国連のコンセンサス方式に疑問を呈していて、藩基文・国連事務総長は気候変動に関するハイレベル・パネルという別の枠組みをつくろうとしています。メキシコは途上国の枠組みの中で、中進国である自分たちの立場をうまく利用して両方を繋ぐ役割の小グループをつくろうと動いています。日本は先進国の中で何とか法的枠組みをつくりたいと、いろんな会合を仕掛けようとしています。それぞれの立場で試行を始めているのが現状で、日本はそれぞれの動きをしっかりウオッチしながら、逃げることなくコミットして、主張をしていく、というのがまず一つの役割です。メキシコに間に合えば最善ですが、とにかくコペンハーゲン合意を基にした一つの法的枠組みをつくっていくというのが日本の明確なポジションであり、これは世界にも理解いただいていると思います。

 第二には、浅岡先生が言われたように、日本の交渉力に、より説得力を持たせるには国内制度で担保されていないといけません。その第一歩として、今回まとめた地球温暖化対策基本法案があります。これは私が民主党の地球温暖化対策本部事務総長の時にまとめた骨組みに、幾つかの点で変更を加えたものです。国内排出量取引制度、地球温暖化対策税、再生可能エネルギー固定価格買取制度、さらにはスマートグリットやスマートメーターを含めた技術開発の促進等々をしっかりつくって、成長戦略の中に組み入れて進めていきます。

 第三に、途上国、新興国に対して日本に比較的優位のある技術をどうパッケージとして出していくかという点です。個別の技術だけではなく、例えば街づくりをする時に街全体が省エネになるように組み合わせた貢献を提案し、そこに鳩山イニシアチブとして資金を供用していくことも必要です。コペンハーゲン合意に賛同し、温暖化対策に取り組むことを通じて、インフラ整備やエネルギー対策、さらには将来のライフスタイルの変化につながるということを、日本が積極的に実務的にプレゼンし、サポートしていくことも重要な要素です。2月に私は、アフリカ連合の閣僚執行理事会に出席し、わずか1日の滞在でしたが、10カ国の外務大臣と2国間協議をしてきました。コペンハーゲン合意に賛同すれば、鳩山イニシアチブをより供与しやすくなるので、水、衛生、電力等々あなたの国のインフラ整備などを含めたミレニアム開発目標(MDGs)に対する貢献をより具体的にできるようになる、それが環境にもプラスになれば、ウインウインの関係が築ける、という説得をしてきました。それを聞いて、直ぐに賛同してくれた国が何カ国もあるわけです。

温暖化法案の問題と課題

 飯田 国内議論をしっかりというのはお二人共通のご意見ですが、現在まさに国会で審議中の地球温暖化対策基本法案について。

前提条件・原単位の問題

 浅岡 野党時代に法案を作っていただいていたので、選挙公約にも掲げられ、鳩山首相の国連演説にも繋がりました。でも、いざ具体的に法律議論になった時に、もともとある幅広い意見が表に出てきたということだと思うんです。それはそれぞれの議員の出身母体の立場を反映するということと、政治主導ではあるけれど、官僚主導的な要素はゼロにはできないこと。そういうのが絡み合った結果として出ている問題があります。

 問題の論点としてはまず、「主要国が意欲的な目標で合意した場合」との前提条件付きの中期目標(2020年に90年比25%減)となっています。このように、中間点が明らかでない時期が予定されているもとで、2050年の長期目標だけを指標とした制度設計がどれほどの実効性を持つものになるか疑問があるわけです。今から挑戦するんだというメッセージを国民、事業者に与えられないと、経済再生のチャンスを逃しかねません。

 一番大きな対策の柱が、キャップ&トレードといわれる国内排出量取引制度。これは総量で継続的に削減していくための制度ですが、その排出量の上限について、法案では、総量規制方式のほか、「原単位」注3)=生産量当たりの方式も「検討する」となっています。経済産業省と財界から「原単位キャップ」という言葉が登場して、原単位でもキャップ&トレードと矛盾しないと平気で言う人たちが政府の中にもある。総量でのキャップとすることは本当に根幹で、国際的な信用に関わる問題です。

 さらに、排出の3割を占める発電所をキャップ&トレードの対象としないことを前提にして、発電部門での目標は原単位とする予定のようです。その目標達成の方策が、環境省のロードマップでもほとんど原子力発電の増設と稼働率を高めることなんです。環境省のロードマップでも、電力と同じく排出量の3割を占める製造業については、2020年までに500万トンしか削減を見込んでいません。日本の総排出量13億6千万トンの3割として4億のうち500万トンしか減らせない。要は大所を減らす仕組みとして考えられていないのです。

 キャップのかけ方についても、会社単位と考えるんですね。欧米では考えられないことで、少なくとも事業所単位です。自民党政権時代や移行期間はもっとひどくて業界単位の目標。これでは検証にならないか、余計な費用がかかります。事業所ごとに効率も削減可能性も異なっています。

 税については、税のグリーン化といわれますが、大きな視点の調整をどうスムーズに移行するかが課題となります。

 再生可能エネルギー目標には、大規模水力や、本当は再生可能エネルギーではない、投入エネルギーが化石燃料のヒートポンプ技術も加えようとしており、これを火力発電所の化石燃料に置き換えることで2・5倍勘定することになっている。経緯としては、旧政権時代のエネルギー供給構造高度化法にすでにそれがあり、同じ条文をそのまま持ってきているわけです。そのため本当に再生可能エネルギー分は実質小さい、さらにその中で、太陽光発電だけをロードマップに大きく位置づけるなど、家庭とか最終消費者のところで、25%削減のほとんどにすえるものですから、非常にコスト高になり、それを最終消費者の負担として負担感が重くなるという悪循環を招いています。

 大本を辿ると、この法律の目的に、本当に削減しながら新しい経済を築いていくという挑戦心ではなくて、既存の経済や産業構造、エネルギー政策などに温暖化政策をあわせることがみえます。福山先生が奮闘していただいていることはよくよく承知しているのですが、政党の中でまとまってくるときに、旧政権の基本的な部分を引きずっていて、これを少し修正するというようなことになっています。

 垣田 政権交代で変えられると思っていたのですけれど、それはなぜですか。

パラダイムの転換が実現

 福山 前提条件については、我々は前提条件をつけていますから皆さん積極的に対応して下さいという話をしているわけです。逆にこれを外すと国際的には、他国に対する交渉のカードを失います。他方で、法案を見ていただければ、法律の中に掲げている政策は前提条件に関係なくすぐに始めると明示してあります。

 また、現在の雇用情勢の問題があります。すぐに経済サイクルの中に気候変動の技術や商品が組み込まれて市場ができて、雇用に問題が生じない状況になればいいのですが、それには一定の時間がかかります。この間の変化については、政権の責任としては、そこを断ち切っていいという議論はなかなかできません。さらに、官僚は今まで政策をつくってきたバックに多くの人を抱えているわけですので、政権が変わったからといって180度転換するようなことは難しいのだと思います。しかし、いろんなことを言いながらも、徐々に変化の方向に進んでいると思います。たぶん官僚が考えていた以上に、この法律の中身や鳩山総理の本気度は大きかったのだと思います。前政権が05年比15%削減を堂々と発表したのが1年前の6月で、今25%を前提に議論されていること自身、パラダイムはものすごく変わっていると私は思っています。

 企業は国の政策を待っていません。これからの低炭素社会での国際競争を想定して、すでに動いている企業はたくさんあります。経済の実態の方が政治よりも早く動くことはいくらでもあり、そうした先行する企業をしっかり支えていくためにも、より実効性のある制度設計を早急にやっていきます。

 原単位については、法律は、「排出総量」の削減を基本的には中心に考えています。主従の関係ははっきりしています。これから具体的な制度設計をしていく時にどの程度その議論が反映されていくのか、国民の皆さんの監視の姿勢が重要だと思っています。

 飯田 法律ができるという点では、確かにパラダイムが変わろうとしている。しかし、その大きさを左右するのは、一体何でしょうか。

国民の政治参加が重要

 浅岡 かなり布石を打ったと見える反面、逆に厳しい布石も打たれているとも見えるわけで、こういう問題の難しさだと思います。本当に大事なのは二つ。国内でしっかり変わることと、国際合意がしっかり動くこと。中期目標なしで始める国内対策が国際合意を動かすものになりえるだろうかという問題です。

 確かに一部の企業は政治を待ってられないと先に行くわけです。しかし今、抵抗している人たちを動かすのは政治であり、そのための力を持ってもらいたいというのが国民の期待です。そこに、影を落とす条文になっているということなんです。

 福山 鳩山総理の国連演説の後、世論調査で25%削減に賛同の方が70%を超えたというのは、すごく大きなことですが、他方で、本当にいいのかという声も上がっているわけです。この現実を見なければいけません。重要なのは、浅岡先生が言われたようにな様々な動きが、表に出てくること自体が、政策決定が変わりつつあるということです。旧政権では全然表に出ないところでやられてきたわけですから。

 具体的な制度設計を民主党政権が始めた時に、どういう声を国民からあげていただけるのか。国民と政治がいかに共同してやっていくのかが重要です。

 浅岡 私は法律家ですので、どこまでが確実で、最悪が何なのかというところに法律の意味があると思っています。世論で動く可能性はもちろんあるけれども、この法律をよりいいものにしていくには、相手の善意に頼る考えとか、変化を期待するというのは最後の最後です。議会は法律を高める場でもあり、そこに期待したいと思います。

 福山 政権の中にいて非常に思っていることは、例えば9月16日に政権が発足して10月16日に約15兆円の補正予算のうち2兆9千億を執行停止しました。これまで予算がついたものを執行停止にするなんてありえなかったことです。しかし、マスコミは「(目標の)3兆円に届かず」と報道するわけです。政権交代がなければできなかったということを冷静に議論をしないと見誤ると思います。我々は既得権益を壊しにかかっています。新たなことをやろうとすると、気持は賛成するけれども本当に大丈夫なのという不安もでます。この両方が混在している状況が今我々の政権がおかれている状況です。これを超えないことには次の未来はないわけです。気候変動はまさにそういうテーマの一つであり、当然、強烈な批判があがります。

 国民の皆さんが、政権交代を経験して、どの立ち位置にいるのかを冷静に考えていただくことは重要だと思います。民主党マニフェストに掲げたことが良いのか悪いのかについて、選挙が終わって8カ月経ってもまだ議論が続いていること自身が、日本の政治風土が間違いなく変わっている証左であると思いますし、国民の政治参加の度合いが全然違ってきているんだと思います。

京都から世界への発信

 飯田 この問題に対して、京都はどうあるべきかについて。

 浅岡 今、京都府も京都市も条例をつくろうとしています。地域づくりの中に、温暖化対策をいいチャンスとして生かそうとしている。市民が考えるいい転機であり、京都の将来にとても重要だと思います。経済界からも京都商工会議所の立石会頭が、日本全体からみてもとても先導的役割を果たしてくれています。「排出削減こそビジネスチャンス」「世界に貢献する仕事をすることが、社員の働きがい、生きがいでもある」と。総合的にみて非常に恵まれた地域なので、日本全体を良い方向に変えていく時の地域モデルを京都で始めることができれば、福山先生を後押しすることにもなり、日本にとっても世界にとってもいいチャンスです。私たちも一生懸命やらなければいけないと思っているところです。

 福山 仰しゃる通りで、知事も市長も積極的だということ、それを条例化して日本国内に高らかに約束しようとしていること、それを支える企業群のトップがやろうと言っていただいていること。これは本当にチャンスだと思います。私たち政治家の役割は、実財源を確保して、チャレンジしている自治体のバックアップです。

 京都出身の外務副大臣だということが、どれほど世界の人たちに大きな影響を持つかというのを、日々感じています。そして京都府や京都市が具体的な取り組みをしているということを提示できれば、世界に対するモデルの発信ともなります。浅岡先生のようなNGOのトップが京都にいて、政治家である私がやらせていただいて、知事、市長がそれに乗ろうとしている、こういう時の利、地の利、人の利を生かして全体として世界に貢献していくような京都にしていきたいと思います。気候変動のみならず、核軍縮・核廃絶、世界の貧困への対応など、地球規模の課題にコミットするスタート地点に立っています。長いチャレンジになりますが、その一端を担わせていただいていることを改めて自覚して、懸命に頑張りたいと思います。

 飯田 どうもありがとうございました。

(4月24日実施) 

 注1)気候変動枠組条約第15回締約国会議(COP15)は、09年12月7日〜18日の日程でデンマーク・コペンハーゲンで開催。温室効果ガス排出規制に関する国際的な合意形成を主な目的とした国際会議で、「京都議定書」に定めのない2013年以降の温暖化ガス削減目標が最大の焦点となった。

 注2)京都議定書 COP3(97年)で採決され、05年2月に発効。08〜12年の先進各国に法的拘束力のある削減数値目標の国際約束。

 注3)原単位 排出枠の設定について、総量に対して生産量(高)当たりの排出量をいう。原単位では排出削減を確保できないばかりか、目標達成のために生産量を拡大しようとする動機ともなり排出増加を誘引しかねないとの批判もある。

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