社保研レポート/ニコチン依存症の正しい認識と治療を  PDF

社保研レポート/ニコチン依存症の正しい認識と治療を

第639回(3月12日)「ニコチン依存症の治療について」
講師:土井内科医院副院長 土井たかし氏

 第639回社会保険研究会は3月12日、土井たかし先生の「ニコチン依存症の治療について」であった。先生は自治医大のご出身で東北・関東地方に多数のご友人が居られる由、東日本大震災の翌日のご心痛を圧してのご講演であった。誠に感謝・感激の極みである。

 先生は地域医療の最前線で多忙な診療をこなしておられる傍ら、特に中学生を対象に禁煙啓発活動に精力的に取り組んでおられ、その実践の中から話題を厳選して提供された。

 まず禁煙治療に立ち向って来る著名人の「個人の嗜好の問題に口を出すな」という喫煙擁護論や/禁煙活動ファッショ論/を明確に批判し、喫煙は/嗜好/の問題ではなく/ニコチン依存症という病気/であることを強調された。現に喫煙者でも半数以上の人は「禁煙したい」と思っていること、思っても止められないのが依存症の本質であることを示された。

 なるほどと思ったのは年齢別の喫煙率で、以前から60歳以上の層で明確に他の年齢層より低い。やはり癌や心疾患を極めて現実的に切実に意識するようになるということ。これは『禁煙治療のための標準手順書』の序文にあるように、「禁煙は最も確実に重篤な疾病や死亡を減らすことのできる方法である」からと納得がいった。

 しかし、依存症であることの困難性は禁煙治療を完遂した人の半数以上が2、3年の内に脱落してしまうデータが示された。これには禁煙継続の足を引っ張る日本という社会の問題も大きいという。タバコの毒性について韓国ではCMで、/紙巻きタバコにはフォルマリン、ヒ素、ダイオキシン、カドニウム、シアン等も含まれている/ことを明示しているが、日本では一切触れない事実。世界標準では受動喫煙防止法等により屋内喫煙には罰則規定が当然あること。タバコ値上げの議論になるとタバコ産業側は必ず栽培農家が潰れると反対キャンペーンを張るが、その裏で安い海外の葉をドンドン輸入している矛盾…等々。喫煙問題に関して、日本社会はまさしく世界の非常識である。

 「禁煙外来」は診療報酬が付いたが、京都府は全診療所数中の禁煙保険治療施設割合で全国ワーストワンの7・7%(ベストは広島県の14・3%)という。そこで一般の診療所でも日常の診療の中で患者を禁煙に誘う必要性が大きいことを強調された。

 さて、ここからが本題の『禁煙治療の成功率を上げる工夫』であるが、ここで紹介紙面が尽きた。後はテキスト(グリーンペーパー175号)、デジタル配信(協会ホームページ)をご覧いただきたい。

(中京西部・鈴木 卓)

講演する土井たかし氏
講演する土井たかし氏

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