看板の掛け替えに過ぎない新高齢者医療制度  PDF

看板の掛け替えに過ぎない新高齢者医療制度

理事長 関 浩
理事長 関  浩

 会員、ご家族ならびに職員の皆様、平成23年あけましておめでとうございます。

 小泉構造改革政治からの変換を多くの国民が望み、政権交代がなされたが、政治とカネの問題、普天間基地問題の迷走、また逆に、財政再建による構造改革の推進を望んだ大都市中間層からもNOを突きつけられ、鳩山政権は自滅した。「脱小沢」を掲げた菅政権は支持率のV字回復をみせるが参院選大敗、経済低迷、失業率高止り、無法中国漁船のビデオ問題、北方領土問題などと経済、外交、安全保障について我が国の進むべき方向性を一向に指し示すことができない現政権に対して、国民の不満は高まっている。

 後期高齢者医療制度後を議論する高齢者医療制度改革会議で示された最終案では、現行制度を廃止して「地域保険」を市町村国保に一本化。その上で、被用者世帯高齢者、国保世帯高齢者は元の保険に戻す。しかし加入する「75歳以上」の高齢者の医療費は、「都道府県単位の財政運営」にするという。

 都道府県内の医療費に対する保険料の負担割合が1割であることは残されたままで、制度全体として負担と給付の関係を明確化し保険原理を徹底させる手法はそのまま存続することになる。そして新制度の「市町村国保への一本化」は、自公政権が始めた医療構造改革の柱としての都道府県単位化を、民主党が継承することを表明したことにほかならない。都道府県単位で完結する新制度が提起されており、これでは後期高齢者医療制度は廃止されるのではなく、逆に構造改革的に「進化」させられ、新高齢者医療制度は看板の掛け替えに過ぎないのである。

 民主党は、国民が総選挙で期待した反構造改革の政治の実現に進むべきであり、また高齢者、国民が十分な医療を受けることができる医療保障制度について、議論のやり直しを求める。社会保障、医療制度は国の責任でおこなうべきである。議論が進む地域包括ケアは、将来、急性期医療は病院、慢性期・維持期医療は看護師、介護福祉士の権限強化・業務拡大により、介護、福祉施設に移行し、第一線の医療機関は在宅医療開始時の指導、急変時の対応、看取りといった、報われることの少ない役割しか果たせなくなる。医師を後景に追いやろうとしているこの制度の問題点を追及するべきである。

 昨年改定においては10年ぶりのプラス改定とされたが、実態は実質ゼロ改定、おまけに医科診療報酬の91%が病院それも急性期病院、基幹病院に振り分けられたものであり、中小規模病院、診療所はマイナス改定である。「勤務医支援」口実の大病院への財源シフトで医療崩壊は止められない。慢性期医療・日常診療の評価引き下げ、医療機関の機能分化を促進するなど、ここ10年間の改定のキーワードがそのままあてはめられている。不合理な点数、療担規則改定には撤回、運用上の改善を求めて活動を続けていきたい。

 さらに2012年度には医療・介護の同時改定が予定されている。急性期医療は医療保険で、慢性期医療は可能な限り「混合診療」が前提の介護保険にシフトと言う改定にさせてはならないと考える。

 協会の各部会活動は永い歴史と実績を有する。これからも協会活動を通じて会員の権利擁護、健全な医業経営をサポートする。また「保険医」の意見を代弁し、自治体・国に対してしっかりと政策提言を行う活動を続けたい。

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