産婦人科診療内容向上会レポート  PDF

産婦人科診療内容向上会レポート

子宮内膜症の診療指針を解説

講演する村上節氏
講演する村上節氏

 第42回産婦人科診療内容向上会が8月21日、京都ホテルオークラで開かれた。滋賀医科大学産科学婦人科学講座教授の村上節(たかし)先生により「子宮内膜症診療指針―取扱い規約の変更点を中心に―」と題して講演された。

 産婦人科医会・大島正義会長、保険医協会・関浩理事長の挨拶に引き続き、社会保険診療報酬支払基金京都支部審査委員・山下元先生より保険請求の留意事項と最近の審査事情をわかりやすく説明された。

 次に、座長の京都府立医科大学女性生殖医科学・北脇城教授による紹介の後、村上節先生の講演が会員95人のもと、なごやかに始まった(村上節先生は昭和61年東北大学卒業、平成20年滋賀医科大学教授となられた)。

 子宮内膜症の取扱い規約を使って日常診療をいかに行うかを多彩な症例について個別的に解説された。

 (1)臨床子宮内膜症に対して積極的な薬物療法を考えてよいが、手術が望ましい症例も含まれていることを念頭に置くべきである。

 (2)確定した子宮内膜症の疼痛に対して薬物療法は有効である。投与可能期間や副作用などを考慮するとLEP(low dose estrogen progestin)製剤やジェノゲストが使いやすいだろう。

 (3)子宮内膜症の疼痛に対する腹腔鏡下手術は有効であるが、保存手術後の再発に対する対策を考える必要がある。

 (4)保存術後の月経痛の再発を防ぐためには超低用量OCやLEP製剤の長期投与、あるいはジェノゲストやレボノルゲストレル放出型子宮内システム(LNG―IUS)の使用を考慮するのがよい。ただし、特に深部病変などでは症状が改善しても病変が増悪してくる可能性もあるので、定期的な所見のチェックを心がける必要がある。

 (5)挙児希望があるならば、原則的に手術を考えるべきである。

 (6)卵巣チョコレート嚢胞の再発を防ぐためには腹腔鏡下手術に加えて、長期間の超低用量OCやLEP製剤でコントロールを図るのがよい。

 そして最後に、EBM(Evidence Based Medicine)からNBM(Narrative Based Medicine)へと題して、これからは患者さんの持つ物語をよく聞いて、EBMに基づき子宮内膜症の診療を行っていくことが求められると語られた。

(下西・大西用子)

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