産婦人科診療内容向上会レポート  PDF

産婦人科診療内容向上会レポート

 第45回産科婦人科診療内容向上会が8月31日、京都ホテルオークラで開催された。浜松医科大学産婦人科学教授・金山尚裕氏が「羊水塞栓症と産科出血」と題して講演し、132人が参加した。

羊水塞栓症と産科出血を臨床的に解説

 京都産婦人科医会の大島正義会長、京都府保険医協会の垣田さち子理事長の挨拶に引き続き、京都府警察本部刑事部捜査第一課・増田茂雄氏より、京都における性犯罪被害者支援の現状について話され、産婦人科医と警察との連携の必要性と京都犯罪被害者支援センター啓発の協力を依頼された。次に、支払基金京都支部審査委員の井田憲司氏より、保険請求の留意事項と最近の審査事情、特にコンピュータ化によるプラス面マイナス面について解り易く説明された。

 座長の京都府立医科大学女性生涯医科学教授の北脇城氏による紹介の後、金山尚裕氏の講演が始まった(1980年浜松医科大学を卒業され、99年同大学産婦人科教授となられた)。

 羊水塞栓症(AFE)は、羊水が母体血中へ流入することによって引き起こされる「肺毛細管の閉塞を原因とする肺高血圧症と、それによる呼吸循環障害」を病態とする疾患で、妊産婦死亡原因の第1位である。羊水中の胎児成分と液性成分が母体循環に比較的大量に流入することにより発症する。実際には物理的塞栓より、アナフィラクトイド反応による肺動脈の攣縮が多い。

 症状より、発症から心停止まで短時間で、時に原因不明の胎児機能不全を認める心肺虚脱型AFEと、初発から弛緩性出血を発症するDIC先行型AFEがある。

 救命には、早期に治療を行うためのAFE臨床診断が重要である。治療では、初期管理が大切で、一次施設では初期ショック対応(気道確保、補液、抗ショック薬剤)とDIC対策(アンチトロンビン投与、FFP投与)をしつつ高次施設へ、高次施設では早期よりのICU管理(DICにアンチトロンビン投与、FFP10〜15単位以上、血液凝固因子の補充、ノボセブン投与等)が求められる。

 何より予防が大切で、より安全な分娩管理が求められる。適時破水をめざし、非生理的人破はできるだけしない、破水後の観察は大切で、特に低置胎盤、子宮内腔に近い子宮筋腫、腺筋症、羊水混濁、遷延分娩、メトロ挿入等子宮内圧が上昇する処置、クリステレル圧出法+吸引分娩後は要注意。帝王切開時に羊水をリークさせない等。

 後産期出血による妊産婦死亡を減らすには、胎盤娩出後の血液に注意する。サラサラならDIC、凝固するなら裂傷、収縮剤無効の難治性子宮弛緩症でサラサラ出血なら羊水塞栓症を疑う。

 分娩を取り扱う産科医にとって、もっとも重要なテーマをとてもわかり易く的確に話していただき、今日からの診療に大変役立つご講演であった。(下京西部・大西用子)

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