産婦人科診療内容向上会レポート/子宮内膜症薬物療法の最新動向を解説

産婦人科診療内容向上会レポート/子宮内膜症薬物療法の最新動向を解説

 第41回産婦人科診療内容向上会が7月11日、京都新・都ホテルで開かれた。関西医科大学産科学婦人科学講座教授の神崎秀陽氏が「子宮内膜症薬物療法の最新動向」と題して講演した。

89人が出席して開かれた産婦人科診療内容向上会

 

 神崎秀陽先生は、昭和47年に京都大学を卒業、平成7年に京都大学助教授から関西医科大学教授となられた。

 座長の大嶋理事による紹介のあと、神崎先生は「もともと京都なのでとても懐かしいです」と参加していた方々に挨拶をされ、和やかな雰囲気の中、講演が始まった。

 「子宮内膜症は手術療法のみでは再発率が極めて高いため、手術療法と薬物療法をうまく組み合わせていく必要がある」と、子宮内膜症の薬物療法の重要性と最新動向について、明快に説明された。

 薬物療法には、対症療法と内分泌療法がある。前者は鎮痛剤としてのNSAIDsや漢方薬があり、後者には、プロゲスチン療法、偽妊娠療法、偽閉経療法(ダナゾール療法)、経口避妊薬療法、薬物的卵巣除去療法(GnRHアナログ療法など)といった様々な治療法がある。ダナゾールは、男性化の副作用のためその使用は限定されているが、十分な効果が期待できる。また、GnRHアナログは、強力な低エストロゲン状態をもたらしもっとも高い有効性が認められ広く使用されている一方で、更年期症状や骨量低下などの副作用があり長期投与ができず、手術療法前後の補助や逃げ込み療法など以外ではその使用が限定されてきている。

 低用量ピル(OC)は、骨量減少もなく長期投与が可能であるが、子宮内膜症そのものに対する効果は他の薬剤に劣り、また静脈血栓症にも注意が必要である。3カ月間投与して効果がなければ中止すべきである。

 プロゲスチン療法そのものは40年以上の歴史がある。第4世代のジエノゲストは男性ホルモン作用がないため肝や血液凝固などに対する副作用が少なく高い治療効果が期待される。ただし不正出血の副作用の頻度が多い。

 このほか、アロマターゼ阻害薬やGnRHアンタゴニスト、新しい鎮痛剤としてのCOX-2阻害剤など今後使用される可能性をもった薬剤についても紹介された。

 現時点でのファーストチョイスとしてOCが望ましく、また、喫煙や高年齢など血栓症のリスクが高い場合にはジエノゲストが良いとのことであった。

 また、長期にわたり薬物療法を行ったチョコレートのう腫が悪性腫瘍となる症例もあり、つねに悪性との鑑別が必要であることも強調された。

(左京・江川晴人)
 

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