理事提言/◆ 地球温暖化対策 ◆削減25% 内なる問題

理事提言/◆ 地球温暖化対策 ◆削減25% 内なる問題

政策部会 飯田哲夫
政策部会 飯田哲夫

 民主党マニフェストは、地球温暖化対策として地球温暖化対策基本法の創設をうたっている。それによれば2020年までに1990年を基準にして25%、2050年までのできるだけ早い時期に60%超の温室効果ガス削減を実現するとしている。具体的には(1)国内排出量取引市場の創設(キャップ&トレード方式)=国内排出量を決め、それを排出主体に割り振り排出量を規制(キャップ)、それを下回った場合はその分を市場取引する(トレード)。(2)地球温暖化対策税の創設=具体的には言及されていない。(例えばイギリスでは2002年「気候変動税」を導入し、各企業の排出削減量(キャップ)に対し、達成できたら税の8割を減免、あまった分はトレード)。(3)再生可能エネルギーの推進=再生可能エネルギーによる発電全量に対する固定価格(一定期間一定価格での)買い取り制度やスマート・グリッド(効率的電力網)の促進。(4)環境外交の促進。(5)その他(省略)などである。

 この25%の温室効果ガス削減(25%削減)はEU(20―30%)英国(34%)ドイツ(40%)に匹敵する数値目標であるが、これに対し、国連環境計画によると、欧米を中心とした機関投資家グループ(資産規模1170兆円、日本は不参加)の25―40%削減宣言がある一方、国内では経済同友会の25%削減支持などを除き、経団連など産業界は「経済活動に悪影響を及ぼす」や「荒唐無稽」と反対している。

 この問題は地球規模の次世代への深刻な問題であり、その対策は現世代、特に先進国が率先して負わねばならないにもかかわらず、自国の自分たちの経済への影響のみを言い立てて反対するのは、(国際的にみても)無責任といわざるを得ない。産業界のキャンペーンである、25%削減はGDP17兆円減をもたらす(正確には今からではなく2020年時点で)や、家計負担が年36万円増える(正確には可処分所得が36万円減る)などは、現在の産業経済構造が何も変化しない(技術革新や社会構造の変革などがなにもない)ことを前提にした試算で、それらをきちんと織り込んだ試算では、逆に2020年時点で、GDP97兆円増、可処分所得76万円増の試算もあるという。広い視野に立ち将来を真に見すえた方針を打ち出してもらいたいものである。

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