消化器疾患の初期診断と治療で講演  PDF

消化器疾患の初期診断と治療で講演

 消化器診療内容向上会を京都消化器医会、エーザイ株式会社、京都府保険医協会の共催で4月2日開催、64人が参加した。

消化器診療内容向上会レポート

 当日はレクチャーと症例検討2題が催された。レクチャーでは、京都医療センター外科医長の山口高史氏が「消化器疾患の初期診断と治療、開業医に求められることは?」と題して講演。消化器疾患の初期診断の困難さと患者側が完璧を要求すること、モンスター患者の問題、裁判所の姿勢等の状況を豊富な実例を挙げて分かりやすく解説された。引き続いて、協会医療安全対策部会理事の林一資氏が「大腸内視鏡偶発症における医事紛争の対応」について講演。大腸内視鏡分野に対しても産科と同様に無過失補償制度の導入の必要性について詳しく説明された。

 症例は2題ともに病歴、血液検査等、内視鏡(動画、必要に応じて静画)の順に各段階で、途中で区切って、ここまでではどう考えるか等を詳細に対話討論しつつ診断の範囲を狭めていき、最後に病理診断が示された。1題目は潰瘍性大腸炎に大腸癌が合併した症例であったが、内視鏡的には特徴的所見は認め難くなかなか難しい症例であった。治療は大腸全摘だが、多くは患者側から拒否され、原則全摘を十分説明したにもかかわらず部分切除に至った経緯をカルテに記す必要性など、後半のレクチャーにも関連するが、対応の困難さにも話題が及んだ。

 2題目として、幼時に腸重積のため横行結腸回腸吻合術を受けた症例で吻合部より遠位の回腸部に生じた病変が検討された。これも1題目と同様難しい症例であった。病理診断は「大腸非特異的炎症」であった。病理出しに際して採取部位まで図示し、小腸である旨重ねて強調しておいたにもかかわらず、病理医が「大腸」と診断した根拠はゴブレット細胞を多数認めたことにあった。確かに学生時代に病理教授が「他の臓器がどんなに化生しようともゴブレット細胞が出現することはない。ゴブレット細胞が1つでも確認できれば誰が何と言おうが大腸である」と断言していた。吻合部より遠位の小腸部の内容は大腸と同様で、さらにその状態の分化が確立していないと推察される幼時から数十年間連続していたためと思慮した次第ですが、誠に稀有な症例であったと思う。単に診療内容向上に大層役立つだけにとどまらず、患者対応力の向上にも繋がる有意義な一日だった。(宇治久世・八木 晴夫)

64人が参加した消化器診療内容向上会
64人が参加した消化器診療内容向上会

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