海江田経済産業相の原発「安全宣言」に抗議する  PDF

海江田経済産業相の原発「安全宣言」に抗議する

 2011年6月18日、海江田経済産業相は、原発に対する安全対策を厳正に評価した結果、措置は適切に実施されているとする大臣談話を発表した。その上で、原発の運転継続、再稼働は安全上、支障がない。電力供給は、震災復興と経済再生のために不可欠と強調し、電力不足に陥らないよう、停止中の原発の再稼働を急ぐ考えを示した。

 このことは、事故内容の検証を行った上で、安全と原発の見直しをと、声を挙げている地元住民を無視し、経済界の要求に応じて電力供給至上主義と経済再生のみの考えのもと、この「安全宣言」を行ったと考えざるをえず、当協会として決して認められるものではない。

 また、原子力安全委員会は福島原発事故を受けて、原発に関しての安全基準を見直し、数年をかけて安全基準の改定作業に入るとしている。もともとの安全基準が不適切であり、その基準を見直そうとしているときに、その不適切な基準のもとで出された海江田産業経済相の「安全宣言」は何の意味も持たない。

 原発は、事故は起こらず、もし起こってしまったとしても安全対策が幾重にも施されているとの「安全神話」を振りまいてきたが、事故はその破綻を世界に知らしめた。

 それにもかかわらず、事故の収束時期すらはっきりせず、事故原因の検証もなされていないままの、「安全宣言」は、「神話」とすら呼べず、空しく響くばかりである。

 また、再稼働の理由付けの一つである電力の安定供給についても、需要と供給の充分なデータを発表せず、電力が足りないということだけを喧伝している。我々は、検証するすべすら持たされていない。このような具体的根拠のない理由で、原発を再稼働させることは、到底納得できるものではない。

 当協会は、人が制御することのできない原発に依存したエネルギー政策から脱却し、再生可能エネルギーへの転換と省エネルギー、エネルギーの有効利用を模索すべきであると考えている。しかし、原発依存を脱したとしても、廃炉や使用済み核燃料の事故の可能性は排除しきれないため、事故の教訓を反映した安全対策を設ける必要があると考える。

 今回の福島第一原発事故は広範な地域の経済と生活の破綻をもたらし、今後も長期にわたって被曝による深刻な健康障害の不安から逃れることができない。そのことを直視し、可能な限りの対策を講じていかなければならないときに、この「安全宣言」を行うなど、経済の発展のためには、国民の安心、安全を犠牲にしてもやむを得ないとでも考えておられるのであろうか。よもやそんなことはあるまい。

 我々はこの原発「安全宣言」に断固抗議する。

2011年6月29日
京都府保険医協会
理事長 関 浩

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