民主党新政権に望む 故 石井議員に思いを致して

民主党新政権に望む 故 石井議員に思いを致して

理事長談話 関  浩

 政治主導・脱官僚依存を掲げ、308議席という歴史的大勝をおさめた民主党は9月16日、鳩山由紀夫氏を内閣総理大臣に選出し新政権が船出した。明治以来、事実上官僚が政策の実権を握ってきた官僚内閣制を、国会内閣制に変えるという同党の政権公約どおり、各省庁における事業仕分けによる不要・不急事業の見直しと、一旦動き出した補正予算事業の見直し・凍結、官僚の会見禁止、ガソリン税暫定税率廃止、天下り温床の公益法人廃止、核持込み・沖縄返還をめぐる密約調査のための外交情報公開、東アジア共同体構想、温室効果ガス25%削減の国際公約などが矢継ぎ早に打ち出されてきた。また社会保障・医療分野については、社会保障費2200億円抑制撤廃、障害者自立支援法廃止、生活保護制度における母子加算復活、後期高齢者医療制度廃止(時期は現状把握後)、また現場の理解が得られていないとして外来5分間ルール廃止、レセオンライン請求義務は原則化、医師数をOECD平均に増加させることが医療詳細版に盛り込まれ、福祉・医療現場の声がしっかり届いたものとなっている。これらは国民が明確に政権交代を求め、政治に変化を求めたものであり、我々医療者側が今まで強く訴えてきたことが反映されている。正に政権が変わったという実感がわいてくる。

 民主党の「官僚による政策立案から、政治主導型に」「税の無駄遣いを正す」との主張が多くの国民の共感を得、政治を根っこから変えて欲しいという国民の明確な支持を得た。

 私は、平成14年右翼を名乗る暴漢の凶刃に斃れた石井紘基民主党議員のことを思い出す。彼は当時、誰も気づかなかった特別会計の実態をあばき、数々の政官業の癒着、税金で赤字補填を受ける特殊法人・政府系公益法人の乱脈さを指摘し、その子会社・孫会社の私企業では宝の山を築いていると痛烈に批判し、「利権で肥え太ったものを許すことができない」と追求してきた。民主党議員の中には彼の遺志を引き継いでいる方も多いのではないだろうか。徹底的な財源のあぶり出しでこの国の形を変えてくれることを期待したい。

 もう一つの政策ポイントとして「地方分権」があるが、都道府県の単位化をてこに、さまざまな福祉や社会保障の実施責任が都道府県に移されてくる。地方への税と保険料財源の委譲を求める知事会の圧力を利用して、各種社会保障にかかわる国の仕事と責任が地方に回されてくる。その結果、個々の地方自治体の実力、優先順位の考え方の違いにより制度・給付水準の地域差、いいかえれば都市と地方の格差が拡大しないかどうか、このことには不安を感じる。しっかりとした舵取りを望みたい。

 新政権の発足後、株式市場の反応は鈍く株価は横ばい、雇用情勢の悪化懸念など日本経済の回復はほど遠い。民主党には内需拡大、雇用機会の拡大効果をもつ社会保障制度の充実を期待するものである。

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