民主党は政権移行期の混乱を克服して、公約の実現を

民主党は政権移行期の混乱を克服して、公約の実現を

理事長 関 浩
理事長 関 浩

 京都府保険医協会会員の皆様、ご家族、職員の皆様、穏やかな平成22年の新春をお迎えのこととお慶び申し上げます。

 政治主導、脱官僚依存、地方分権をキーワードとした民主党の政策―無駄な事業の見直し、天下り温床の公益法人廃止など、また、社会保障費2200億円抑制撤廃、後期高齢者医療制度廃止などに加え、外来5分間ルール廃止、レセプトオンライン義務化撤回などは医療現場の声がしっかり届いたものとなっています。しかし政権交代後、3カ月が過ぎ、主に財源問題から、政策の根幹にも関わる解決困難な事態が表れ始めてきたことも事実です。

 民主党が掲げた「地方分権」は国民の評価するところとなっておりますが、国は安全保障、外交を担い、片や大きな地方政府に権限・予算をふりわけ福祉・社会保障を担わせ、その実施責任を地方自治体へ押し付けることが、その本質であってはならない。このままいけば地方自治体は、自らの生き残りをかけ、徹底した経費削減(行政改革)を進めざるを得ない状況に追い込まれてしまう。

 後期高齢者医療制度廃止を掲げた民主党政権は、2013年4月に新制度を施行させる方針ですが、すでに短期保険証を発行された高齢者は全国で2万8千人、10年度以降の保険料は全国平均で約10%増加するという。このままでは高齢者の負担増、都道府県格差が広がってしまう。可及的速やかに制度の廃止を求めたい。

 行政刷新会議の「事業仕分け」においては、財務省主導の「先に結論ありき」の偏った資料で開業医と勤務医の収入平準化、収入の多い診療科の点数見直しなどの誤った決定が出されました。また、民主党の公約で医療崩壊を食い止めるため、「総医療費をOECD並みに引き上げる」と明記されたにも関わらず、財務省が発表した「医療予算について」では、全体としてのマイナス改定を求めました。02年からの4回連続マイナス改定が、医療機関を直撃し、その結果「医療崩壊」を引き起こしたことを忘れてはならない。我々は、医療政策の根本的な誤りを明らかにし、一部の診療科や医療機関に対する診療報酬の引き上げだけを行っても病院勤務医の問題は解決せず、次回改定では、診療報酬の引き上げに向け、財務省を含めた政府全体の統一を図るよう強く要望したい。

 09年11月25日、診療報酬の請求方法は電子レセプトによる請求を原則とし、オンライン請求のほか光ディスク等による請求も可能となりました。協会は07年春、65歳以上の会員対象の実態調査の結果、義務化により、回答者の3割が「引退」の意志を示すという愕然たる結果を公表しました。この調査結果は『京都新聞』が1面トップで取り上げ、各方面に大きな反響を与えました。しかし、電子レセプト請求までは義務化されたため、標準病名・レセプト様式の変更は画一的審査につながり、目的外利用、情報漏洩、社会保障カード導入などの問題は残ることになります。

 国民健康保険は危機的状況であり、保険証の取り上げにも等しい短期保険証・資格証明書発行、11年連続で自殺者が年間3万人超、貧困、雇用不安このような状況を生み出した原因の一つが、この国の社会保障制度そのものの脆弱性にあります。社会保障に関する法律がいくつもあるのに、なぜ、こんな状況が生まれるのか。これからの日本は、国家や自治体の責任によって社会保障を再建し、国としての活力を生み出す福祉国家への道を目指すべきではないでしょうか。そして、協会の目指す社会保障基本法とは、憲法と個別の実定法をむすび、構造改革による個別の法律や制度の改革を防ぎ、逆にその改善を促す役割を持つものと考えております。ご理解ご支援を賜りたく存じます。

 皆々様にはこの1年健やかにお過ごしいただくとともに、協会活動に一層のご支援を賜りますようお願いして、新年のご挨拶とさせていただきます。

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