施設職員による高齢者虐待、増加傾向/07年度実態調査

施設職員による高齢者虐待、増加傾向/07年度実態調査

 厚生労働省は10月6日、2007年度に行った高齢者虐待防止法に基づく高齢者虐待実態調査の結果を発表した。同調査は前年度に続いて2回目。介護施設職員による高齢者虐待では「市町村などに相談・通報があった事例」と「市町村や都道府県が虐待の事実を認めた事例」がともに前年度より増加した。厚労省は、09年度以降も同様の傾向が続くとの見方を示している。

 07年度調査結果によると、全国の1816市町村に寄せられた介護施設職員による高齢者虐待の相談・通報は379件で、前年度の273件から106件増加し前年度比は38.8%増となった。このうち虐待の事実が認められた事例は前年度比14.8%増の62件で前年度から8件増加した。

 虐待の事実が認められた62件の発生場所は「認知症対応型共同生活介護(グループホーム)」19件(30.6%)、「特別養護老人ホーム」17件(27.4%)、「介護老人保健施設」9件(14.5%) の順で多かった。虐待の内容(複数回答) は、入所者に暴行を加える「身体的虐待」が48件(77.4%) で最も多く、次いで激しい暴言を浴びせるなどの「心理的虐待」19件(30.6%)、「介護放棄」10件(16.1%) などだった。

 虐待の事実が認められた被虐待高齢者の男女比は、女性が79.0%でほぼ8割を占める。高齢者はそもそも人口構成比で女性の占める割合は高いが、厚労省はそうした前提を踏まえても被虐待者は女性の方が多い傾向にあると指摘している。年齢は80歳代が39.0%を占め、約4割に及ぶ。要介護度では「3以上」が84.0%を占める。

 一方、虐待した介護施設職員の年齢は30歳未満が23.2%と最多。60歳以上の職員による虐待も10.1%で1割を超えた。職種別では介護職員が全体の84.1%を占める。

 家族などの養護者による高齢者虐待も前年度より増えている。相談・通報の件数は1万9971件で前年度から1581件増加し、前年度比8.6%増。市町村による虐待事例への対応では「被虐待高齢者の保護と虐待者からの分離」が35.5%で、分離の方法は「介護保険サービスの利用」が38.2%、「医療機関への一時入院」が21.0%となった。

 市町村の高齢者虐待防止への体制整備は今回の調査では13項目の調査項目すべてで前年度より実施率が上昇していた。特に「相談・通報窓口の設置」「対応窓口部局の住民への周知」については、それぞれ実施済みは全体の99.9%、98.5%で、ほぼすべての市町村で実施済みとなった。(10/7MEDIFAXより)

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