新年度にあたって/副理事長所感 医療安全対策部会 貫戸 幸彦

新年度にあたって/副理事長所感 医療安全対策部会 貫戸 幸彦

医事紛争の08年度状況と医療安全対策 50周年を迎えての今後

 京都府保険医協会は、2009年度で60周年を迎えるが、それと同時に医療安全対策を施行して、50周年を迎えることとなった。会員各位には、今後とも協会の医療安全対策をはじめ、諸活動について、ご理解・ご協力を願うとともに、一層のサービスを心掛けていきたい。

 さて、08年度の医事紛争の主な特徴を挙げると、次のようになる。

 (1)事故報告数は62件で、03年度(103件)をピークに明らかな減少傾向にある。(2)解決率は9割を超えた(02年以前は全て解決)。(3)病診の比率は病院:診療所=2:1で、顕著な病院報告の減少が認められた(例年は4:1程度)。(4)「医療崩壊」に伴う医療従事者不足を起因の一つとする医療事故が散見された。(5)例年通り「内科医師」が紛争に遭遇する数が多い。

 (1)は、会員にとって好ましい傾向にあることは異論ないところと思うが、その内的要因として推測できるのは、まず、医療機関側の安全対策の体制が明らかに整備され、経験も蓄積されてきたことが挙げられよう。外的要因としては、07年頃からの傾向だが、マスコミが「医療崩壊」について報道を続けた結果、一般市民にも医療現場の窮状が、啓発されてきたのではないだろうか。医師や医療機関を攻撃するだけでは、我が国の医療は全く良くならないことを、一般市民に少しでも知っていただいたとしたら幸いである。

 (2)については、過去には8割程度の解決率であった。解決率が上昇したことは歓迎すべきであろう。今後とも努力を続けていきたい。

 (3)についても、喜ばしいことが続く。かつては病院の事故報告が圧倒的に多く、予防対策を含め、対応策に苦慮していたが、ここにきて協会の医療安全対策が、各会員医療機関に浸透してきたと自負したいところである。

 (4)については深刻な事態である。医療従事者の不足が患者の安全を脅かすことのないように、国は大至急に有効な政策を打ち出すべきである。協会としてもこの状況を注視していきたい。

 (5)については、毎年機会あるごとに報告しているが、決して内科医師にリスクが集中しているわけでなく、絶対数が多いことが要因と思われる。むしろ、外科系の医師の方が紛争に遭遇する率は高いと捉えるべきであろう。

 冒頭にも述べたが、協会の医療安全対策は、他に追随を許さない経験と体制を整えていると信じる。会員各位には、万一に備えて、是非、協会の医賠責保険に継続加入していただくとともに、気がかりな事案が発生した時には、遠慮なく協会の医療安全対策部会を活用していただきたい。

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