新年度にあたって・副理事長所感/政策部会・垣田さち子

新年度にあたって・副理事長所感/政策部会・垣田さち子

社会保障を大切にする国を作ろう

 「市場に任せよ」を合い言葉に世界を席巻した「新自由主義」路線の破綻が明らかになり、100年に一度といわれる大不況時代に突入する中、アメリカと共に我が国もかつて経験したことのない大きな政治変革の時を迎えつつある。

 戦後、幾多の国民的大運動の中で勝ちとられてきた日本の社会保障の諸制度までが、「聖域なき構造改革」の勇ましいかけ声と共に市場原理を持ち込まれ、この数年のうちに、およそ社会福祉とは呼べない代物に変質させられてしまった。

 医療の分野においても、2006年に法律化された「後期高齢者医療制度」をはじめとする医療改革が実施されるにつれて、医師不足、病院閉鎖・地域医療崩壊、医療難民等々、部分的な手直しではもう止めようのない「医療崩壊」の進行が、今や誰の目にも明らかになりつつある。

 2001年に政策部に就任して以来ずっと、私たちはこの「小泉構造改革」との戦いに明け暮れてきた訳で、それは、4年前の郵政選挙に象徴されるように、国民の皆様の圧倒的支持を受けた路線との対決でもあった。

 「福祉のお世話になるのではなく、一部を支払うことで利用者の権利が守られるのだ」などと言う屁理屈が堂々とまかり通っていた。「持続可能性」という言葉も金科玉条の威力を発揮した。このままではそのうち立ちゆかなくなる、と脅されるとひるむ。

 「構造改革」路線は、恫喝と自立へのプライドをくすぐる褒め言葉で、国民をその気にさせて誘導した。しかし、言われたとおり何年にもわたって社会保障費を削減し続け、持続を目指して努力してきた制度自体が崩壊の危機では、いったい何を守ってきたのか。

 7月12日の東京都議選の結果は、自民・公明によるこれまでの政治を変えたいという意志をしっかり示した。投票率が10%も上がったという。来月には、4年ぶりの衆議院選挙が行われることになった。人々は、しんどさが増す日々の生活の中で鍛えられた思いを込めて、一票を投じ国政に参加するだろう。

 日本の医療制度は複雑で、ついこの間まで「医療のことは医者に任せて下さい」という思いが私たちにもあった。しかし制度の疲弊で、医療の手が届く前に亡くなっていく人々が増えているとき、立ち上がるべきは、当然の権利として医療保障を求める患者・国民自身である。社会保障を大切にする国を作ろうという国民の明確な意志が再確認されなければならない。

 京都府保険医協会の長い歴史を受け継いで、もう一期努めさせていただきます。

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