改訂版 医療安全対策の常識と工夫

改訂版 医療安全対策の常識と工夫

訴訟! 裁判!

 言うまでもなく「訴訟」は、医師にとって、また医療機関にとっても最悪の事態です。京都府保険医協会に報告される患者さんとのトラブルの中で、1割〜2割程度が、残念ながら訴訟を申し立てられています。

 訴訟になるケースを見ていると、患者さんが死亡したり重度の後遺障害が残ったりと、極めて深刻な事態がほとんどで、外科系に関連したものが多いようです。申し立ての内容から患者さん側には、医療の不確実性や将来の予見不可能性といった不可抗力の要素は、最初からはなかなか理解してもらえないという現実も浮び上がっています。

 患者さん側が裁判所に訴訟を申し立てたら、その後一定の時間をおいて、医療機関側に「訴状」が送付されます。訴状が送られて医療機関側が訴えられたという事実を知る前に、マスコミが電話で見解を尋ねてくることも多々あります。訴状が送付されるのはその1カ月以上も後になって、ということも実際にありました。

 そこで医療機関のコメントは、新聞などでご覧の方も多いと思いますが、「訴状を見ていないので判らない、返事のしようもない」というのが一般的です。もちろん、そういったコメントをすることに問題はありませんが、医療機関側に賠償責任がないと思われる、また、第三者的にも判断がされている場合には、実際に訴状が手元になくても、医療機関側の基本的な考え方を、明確にするのもやぶさかではないと思われます。

 次回も引き続き、裁判についてお話しします。

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