改訂版 医療安全対策の常識と工夫(20)  PDF

改訂版 医療安全対策の常識と工夫(20)

是非ご確認を!「医事紛争」「医療事故」「医療過誤」の違い

 「医療事故」とは、医療行為の過程において予期しなかった不良な事態が発生し、患者さんに何らかの侵襲を来したことを言います。しかしながら、これ自体は必ずしも、医療機関側の賠償責任が問われるとは限りません。何故ならば、医療には不可抗力や医師でさえ予見できない事象が多いからです。

 「医療過誤」とは、「医療事故」の原因が医療機関側の診療上の注意義務等の違反によるものです。つまり、一定の医療水準の下では予見が可能で、より慎重にすれば避けることが可能だったということになり、この過失によって患者さん側に損害が生じた場合には、明らかに医療機関側に賠償責任が発生します。

 「医事紛争」とは、「医療事故」あるいは「医療事故」と誤解されることにより、患者さん側と医療機関側との間に、人間関係のもつれが生じることです。従って、必ずしも医療機関側に賠償責任が発生するとは限らないことになります。

 この三者を混同すると、「医療事故」即ち賠償責任、極端な場合には患者さんの治療結果や医療従事者への不平・不満が金銭問題へ直結してしまいます。素人の患者さんにしてみれば、そう思い込んでしまうことに無理もないケースもありますが、医療のプロである医療機関側が混同していては、纏まる話も纏まりません。この点だけは日頃から明確に区分しておいていただきたいと思います。医療機関側が確かな知識を持ち、患者さんとの人間関係を良好に保てば、万一「医療事故」が起こったとしても、「医事紛争」にまで至らないこともあるのです。医療は決して医学知識だけでは十分でないことを改めて認識すべきと考えます。

 次回は、患者さんの心理についてお話します。

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