改定版 医療安全対策の常識と工夫(1)

改定版 医療安全対策の常識と工夫(1)

医師として毅然とした態度を!

 医事紛争の特徴として、患者さん側が直接カルテ等の開示を医療機関側に要求してきたり、いきなり弁護士を立ててくる傾向があります。また、患者さんの凄まじいクレームに困惑している会員も相変らず多く見られます。医師として考えた場合に、特に問題がなくても、医事紛争は日々勃発しているのが現状です。

 つまり、医療事故が即、医事紛争とは限らないのです。どのような名医でも医事紛争に巻き込まれる可能性は否定できません。実際に、「私は医者を何十年間とやってきたが、患者さんからこのようなクレームを言われるのは初めてだ…」と嘆き動揺するベテラン会員も大勢おられます。

 そのような時に、先ず医療機関がすべきことは、冷静に患者さんの言い分を聞くことです。その際に、患者さんは非合理的なことや、事故と直接関係のないことまでも、繰り返し繰り返し言ってくるかも知れません。そのような主張が2時間を超えるケースも稀ではありません。

 これは口で言うほど簡単なことではないようですが、少なくとも1回はそのような場面に対応せざるを得ないでしょう。それから、患者さんの言い分を一通り聞き終わった後で治療の経過、事後の処置などについて、医学的に分かりやすく、落ち着いた口調で説明することが大事です。患者さんは、言いたいことを全て吐き出した後には、意外と合理的なものの考え方ができる場合もあるからです。患者さんの言い分をナンセンスと軽く片づけることなく対応して、医療の専門家たる医師として合理的に説明することが、無用なトラブルを避ける第一歩と言えましょう。

 次回は、医事紛争に至ってしまう幾つかのパターンをご紹介します。

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