改定版 医療安全対策の常識と工夫(23)  PDF

改定版 医療安全対策の常識と工夫(23)

インフォームド・コンセントの実践

 インフォームド・コンセントという言葉が、頻繁に聞かれるようになったのは、1990年になって直ぐのことでした。ところが、この概念は外国からのいわば直輸入で、当時はその解釈をはじめ、必ずしも我が国の医療現場の隅々まで、馴染んでいるとは言えなかったようです。現在でも、医師側は「ムンテラ」と混同してしまうケースが時に見られます。インフォームド・コンセントは患者さんが主体ですので、その点は注意が必要です。

 そこで、インフォームド・コンセントの実施にあたって、具体的な内容についてお話ししてみたいと思います。

 (1)傷病の症状(診察検査所見を含む)、(2)治療の方法と内容、(3)治療の必要性(実施しない場合の予後を含む)、(4)治療に伴うリスク、(5)治療実施時の予後、(6)代替方法の有無。

 これは日本医師会の生命倫理懇談会が、90年1月にまとめた報告の中に盛られた初めての概念で、現在の考え方の基本となったものです。

 同様に日本医師会が03年9月に「診療情報の提供等に関する指針」で以下の項目を診療中の診療情報の提供の事項としました。内容は前述したものとほぼ同様ですが、主なものを参考までに挙げます。

 (1)現在の症状及び診断病名、(2)予後、(3)処置及び治療の方針、(4)処方する薬剤について、薬剤名、服用方法、効能及び特に注意を要する副作用、(5)代替治療法がある場合には、その内容及び利害得失、(6)手術や侵襲的な検査を行う場合には、その概要、危険性、実施しない場合の危険性及び合併症の有無。

 これら全てが満たされていないと、必ず説明義務違反が問われるというものではありませんが、ひとたび医事紛争となると、チェックされる項目であることには違いありません。日常診療において常に頭に入れておいてほしいものです。それから実践したら、1行でも構いませんので、カルテにその旨記載しておきましょう。

 次回はカルテ開示の留意点についてお話します。

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