憲法を考えるために(32)  PDF

憲法を考えるために(32)

「再・集団的自衛権(2)」― 解釈改憲 ―

 (前回要約)集団的自衛権とは、「自国と密接な関係にある国に対する武力攻撃を、自国は直接攻撃されなくとも、自国への攻撃と見なして、それに対して武力行使をする権利」であり、「憲法の下で、武力行使を行うことができるのは、我が国に対する急迫、不正の侵害に対処する場合に限られるのであって、他国に加えられた武力攻撃を阻止することをその内容とするいわゆる集団的自衛権の行使は、憲法上許されないといわざるを得ない」(政府公式見解)。

 今回は集団的自衛権をはじめ、防衛・軍事にかかわる最近の動き−上記政府公式見解にもかかわらず集団的自衛権を含め、これらに関する今までの見解の変容を求める最近の動きについて述べたい。

 8月、現首相の諮問機関「新たな時代の安全保障と防衛力に関する懇談会」が報告書を提出した。これは今年末に改定され、安全保障政策・防衛力整備計画の基本を定める防衛計画大綱の基礎になるといわれている。そこでは今まで現憲法の下で堅持されてきた諸原則が、以下に見るように放棄されてしまっている。

 (1)集団的自衛権は、安全保障条約国(軍事的同盟国、勿論米国を指す)へ向かうミサイルを迎撃できないなど「国の防衛や同盟の維持」に支障があるので、日本自身が従来の解釈を変更する(ことは可能)。(2)現在の基盤的防衛構想(=専守防衛)は受動的発想であり継承せず、動的抑止力(注)を構築する。(3)武器輸出(禁止)三原則の廃止は、戦闘機などの国際軍事開発(市場)に参加でき、(テロ対策用)装備品の供給を通じて平和に貢献できる。(4)非核三原則は、重要な米国の核の傘の下で、米国の手を縛ることになるので、見直しが必要である。(5)PKO参加五原則、武器使用基準を見直し、自衛隊の海外派遣を活発化させるべきである。

 以上、これらは国民の直接の承認に基づかない改憲−解釈改憲に他ならないといわざるを得ないであろう。(続)

(政策部会理事・飯田哲夫)

(注)動的抑止力:「動的」が何を意味するのか現時点では詳細不明。抑止力は国際的にも有効でないといわれているが(播国連事務総長)、抑止力と防衛力とは異なった概念。防衛力は文字通り他国から自国を守ることであり、専守防衛の考えも成り立つ。一方、抑止力とは自国が攻撃を受けたら、他国に対しそれ以上の報復攻撃をすることをあらかじめ準備することをいい(それゆえその根底には恐怖が前提される)、専守防衛の考えとは相容れないばかりでなく、憲法前文「全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免れ、平和のうちに生存する権利を有することを確認する」とも相容れない。核が存在する現在において、抑止力は核抑止力に向かわざるを得ないであろう。

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