忘れ得ぬ症例 こんな連携もありかな!  PDF

忘れ得ぬ症例 こんな連携もありかな!

吉河正人(福知山)

 Kさんのことを書いてみたいと思います。

 医療・介護の場において、多職種連携が声高に叫ばれていますが…。

 Kさんは81歳の春に脳出血で倒れ、右片麻痺と認知症で寝たきり状態となりました。

 煙草が好きで、肺気腫となり、肺炎で入院した後も吸い続け、血圧コントロールも自己中断し、「コロッと逝くんや」が口癖だったそうです。

 奥さんを外来治療していた縁で、退院した6月初めから訪問診療を開始。住み慣れた我が家に帰った「在宅力」でしょうか? 発語や摂食が驚くほどよくなり、サポートチームもやり甲斐を感じていました。副鼻腔炎の急性増悪や尿路感染症で発熱することはあっても、抗生剤投与で対処できていました。

 山里に厳しい冬が訪れた12月、低酸素血症(胸水貯留によるものでしたが)で再入院。

 年が明けてからは2カ月毎の入退院を繰り返し、HOT導入も行いましたが、4月の入院後は経口摂取不能となりました。

 親族相談の結論は、経管栄養や高カロリー輸液を希望しないとなり、末梢輸液路の確保も困難となって、皮下注入の事態となりました。病院としては対処しようがなくなり、家族の希望もあって、自宅での看取りに向け退院前カンファレンスが設定されました。

 病院スタッフ、在宅スタッフ(ケアマネジャー・担当医・医院看護師・訪問看護ST看護師・ホームヘルパー・訪問入浴S職員・介護用品レンタル業者他)が集まり、自宅看取りの方針が確認されました。ここで問題が一つ。病院から自宅までの移送をどうするか? 介護タクシー利用では道中の急変に対処できない。結局、ストレッチャーを装備した当院の訪問診療車を使い、外来休診日に付き合う羽目になりました。しかし、更なる問題点が!車を降りてから自宅までは、数十メートルの狭い土道で、ストレッチャーよりも担架がベターなのです。誰が担うのか?「ワシが行きます」と言ってくれたのは、介護用品レンタル担当者でした。この発言に「これぞ大江町チームや。すごいで!」の声が。

 現場には、担当でない男性ケアマネも応援に来てくれ、当院休診日のため、同乗は我が古女房という事態となりましたが無事終了。

 帰宅1週間後、Kさんは静かに永久の眠りにつきました。合掌。

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