後発医薬品使用促進の問題を考える 政策部会理事 飯田哲夫

後発医薬品使用促進の問題を考える

なりふり構わぬ変更誘導は医師の専門的判断、患者の信頼を損なう

政策部会理事 飯田 哲夫

 比較的最近になって、ジェネリックが一般的になり、使用頻度も上昇していると思われるが、その薬効、安全性に関し、さまざまな話を耳にするものの、集積されたデータに基づく科学的検証が多く存在し、公表されているようには思えない。この問題に対する国の方針は、後発品の品質に関する(一般の)研究論文等を収集し、後発医薬品相談窓口に(一般から)寄せられた意見を検討し、「必要に応じて」検査をする、とされている。これが医薬品の安全性などに主体的に責任を負うべき国の方針である。

 この現在の状況における、ジェネリック使用に関する注意点について、京都府薬剤師会に提供していただいた資料(「グリーンペーパー08年10月27日号」に掲載)をもとに簡単にまとめてみたい。

 (1)持続性製剤(テオフィリン徐放製剤など―血中濃度推移が異なる場合がある)、(2)治療濃度域が狭い薬剤(ワーファリンなど―有効量と中毒量の差が小さい)、(3)ステロイド外用剤(基剤による効果の違いがありうる)、(4)ホルモン剤(少量で効果発現するため、製剤間で反応が大きく変わる可能性がある)、(5)そのほか、化学療法(抗腫瘍)製剤、劇薬・毒薬など。(6)さらに、保険上の注意として、先発、後発間の効能効果の違い(特にジェネリックへの変更を容易にした現行の処方せんによる場合)などがあるであろう。

 我々が薬剤を処方する場合、その医学的適正と安全性に配慮するのは今さらいうまでもない。そして我々がジェネリックを考慮する主な理由は患者負担の削減であろう。盲目的な先発メーカー依存、全面的な後発メーカー否定、あるいはその逆でもなく、安全性と経済性双方に可能な限り合理的な判断をするべきであろう。そして薬剤処方は医学的適正にとどまらず、医師患者間の信頼関係にも大きな影響を及ぼすとともに、薬剤処方はそれにかかわるさまざまなファクターへの、一人ひとりの医師としての信念に基づきなされる、医師の裁量に属するものである。

 それにもかかわらず昨今、ただただ医療費削減のみ目的とするジェネリックへの変更誘導―患者への(受診時に提示させる)ジェネリック医薬品希望カードの送付、使用中の(先発)薬剤をジェネリックに切り替えた場合の差額の患者への通知、さらにジェネリックへの切り替え抵抗への指導すら行われかねないなど、なりふり構わぬ変更誘導が繰り広げられている。(詳細については1面記事を参照されたい)。

 これらの動きは先ほど述べた問題を考慮することなく、医師の裁量を侵害し、そしてなによりも、築き上げられた医師と患者の信頼関係を損なうものであることは明らかである。

 国にとって、薬剤の安全性を高める努力をするとともに、経済優先の医療政策―低医療費政策、患者負担増などをやめることこそ、本来なすべきことである。

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