地域発…伏見 他科のための精神科疾患学ぶ会立ち上げ  PDF

地域発…伏見 他科のための精神科疾患学ぶ会立ち上げ

 精神科疾患の患者が増加傾向にある現在、精神科以外の医師が精神科疾患の診療のポイントを学び、日常診療に役立てるため、「伏見精神医療勉強会」を伏見医師会が立ち上げた。勉強会は古家敬三副会長(地域医療担当)、廣兼元太氏らが世話人となって運営。第1回は「実地医科のための抗うつ薬・抗不安薬の使い方」をテーマに、10月23日に開催された。伏見医師会は今後も勉強会を開催予定である。

 最初に、廣兼元太氏(広兼医院)から、「抑うつを訴える症例とうつ病の薬物治療」と題して話題提供。廣兼氏は、患者の症例を2つ紹介しながら、(1)うつ病の抑うつの特徴、(2)非うつ病性の抑うつの特徴、(3)うつ病の診断、(4)うつ病の治療、(5)精神薬の作用機序と副作用等―について説明があった。

 続いて、伏見医師会所属の精神科医師によるパネルディスカッションが行われた。パネリストの廣兼氏、東前隆司氏(東前医院)、的場祥人氏(醍醐病院)は、他科の医師が精神科疾患を診察するにあたっての3つのポイント((1)精神科疾患の診断のコツ、(2)専門医紹介のタイミング、(3)実地医家でもこなせる薬物療法)についてそれぞれ発言した。またフロアからの質問にも応じた。

精神科疾患の診断のコツ

 廣兼氏は、適応障害の治療は、薬物療法以上に周囲の環境改善が必要でアドバイス等をしている。診察時間が長時間確保できない場合は、その旨をきちんと説明し、次につなげることも大切である、と発言した。

 東前氏は、患者が何の疾患なのか、当たりをつけることが肝要。そのためには、患者の話を聞く。さらに、自分が対応できる疾患か否か、他院に紹介するか否かの判断が必要となる。患者の訴えを否定せず、acceptすることが重要。助言ではなく、受け入れる。人間は苦しみを言語化することで改善する。患者が自らの口で自らのことを話し出したら半分は治ったと言ってよい、と述べた。

 的場氏は、患者との雑談的なことから糸口が見えることもある。趣味の楽しみがなくなってきた、主婦が調理をおっくうに感じる等が一つの兆候。うつになると判断力が低下するため、家事の遂行能力の低下が見られたら、うつを疑ってもよいと考える、と述べた。

専門医紹介のタイミング

 的場氏は、精神科疾患に係る得意な薬を1〜2種類身につけておくことも重要で、これらの薬剤で改善しないなら専門医に紹介するとよい。就労中の患者で休業の診断書が必要な場合は専門医に紹介してほしい、と述べた。

 東前氏は、自院で手に負えないと思ったらすぐ専門医に紹介してほしい。他院への紹介のタイミングは、診ていたが悪化した・改善がない、医師との関係が良好でない時と考える。患者は“見捨てられること”を最も恐れる、と助言した。

実地医家による薬物療法

 廣兼氏は、躁状態の既往のある患者に対する抗うつ剤の処方は慎重に。薬剤の適応は日々変化していることを頭に止めておいてほしい、と要望した。

 東前氏は、抗不安薬で汎用されている薬剤は、依存性も高く、止めるタイミングを見極めることが重要である、と述べた。

 的場氏は、投与時は患者の依存性を判断することが重要。同じ成分(同一系統)の薬剤の複数処方はできるだけ避けることが肝要である、と助言した。

 協会は2月17日、「他科のための精神科疾患」をテーマに社会保険研究会を開催します。

パネルディスカッションのもよう
パネルディスカッションのもよう

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