国民会議の費用推計「あまりにずさんな仮定」/日医が見解

国民会議の費用推計「あまりにずさんな仮定」/日医が見解

 日本医師会は9月10日、内閣府が9日の社会保障国民会議サービス保障分科会に提示した医療・介護費用のシミュレーションの前提について、「前提は『大胆な仮定』に基づくものとされているが、地域医療崩壊の現実を踏まえれば、あまりにもずさんで無謀な仮定だと言わざるを得ない」と批判する見解を発表した。会見した中川俊男常任理事は「怒りさえ感じる」と述べ、医療・介護提供体制の在り方について十分な合意形成を行うべきだと強調した。

 中川常任理事は「医療は急性期から慢性期まで、切れ目なく提供されなければならない」と指摘。国民会議が6月にまとめた中間報告に対し、日医は「急性期病院に限った資源配分は問題だ」と主張してきたことを説明しながら、今回のシミュレーションの前提でも病院に資源を集中投入する方向が示されていることを問題視した。また、サービス保障分科会の中間取りまとめで「医療・介護サービスのあるべき姿を具体的に示す」としていたにもかかわらず、今回のシミュレーションの前提は「大胆な仮定」となっていることに対し、「中間取りまとめと矛盾している」と批判した。

 中川常任理事は、「シミュレーションの前提」で示された2025年の「長期療養(医療療養)」の受け入れ人数についても言及。「選択と集中」により医療提供サービスを改革した場合の「3つのケース」は、改革を行わない「現状投影ケース」の36万人より13万−15万人も減少させていることに対し、「日医の調査では、05年時点で75歳以上人口の33.2%が『独居』または『いわゆる老々世帯』。こうした状況での在宅偏重は、孤独死の激増を招き危険だ」と指摘した。その上で、日医が25年時点の試算として医療療養病床33.5万床、新たな介護施設など17.8万床が必要と提示していることを紹介しながら「受け皿の整備は国の責務」と訴えた。

 さらに中川常任理事は、「3つの改革ケース」を実現するため、平均在院日数のさらなる短縮と、1床当たりに必要となる職員数がそれぞれ示されていることについて、「平均在院日数を12日や9日にすると書いて、そのために職員を何割増やすなどとしているが、一体何を根拠にしているのか。エビデンスなどある訳がなく、『エビデンスを示せ』とすら言いたくない」と批判。すでに行き過ぎた平均在院日数の短縮化の結果、困難な在宅医療や通院を強いられている患者がいると説明しながら、地域や社会的背景を踏まえ、国民や患者の立場から「在るべき姿」を提言することが先決だと強調した。(9/11MEDIFAXより)

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