厚労省に10年診療報酬改定で改善要請 保団連  PDF

厚労省に10年診療報酬改定で改善要請 保団連

入院中の他医受診、同一建物の訪問診療、指導管理料の算定制限

改善要請を手渡す住江保団連会長
改善要請を手渡す住江保団連会長

 保団連は9月15日、厚生労働省に対して2010年度診療報酬改定に関する改善要請を実施。保団連からは住江会長、武田診療報酬改善対策委員長と、京都協会事務局1人を含む事務局8人が参加。厚労省保険局医療課からは前田課長補佐が対応した。(1)入院患者の他医療機関受診制限、(2)訪問診療を実施する際の同一建物居住者に対する点数、(3)在宅療養指導管理料の算定制限―を中心に改善を要請した。また、他医受診制限撤回を求める京都の署名も提出した。

他医療機関受診に係る減算措置の根拠は不明

 入院患者が専門的診療を必要として他の医療機関を受診した場合、入院・外来双方で新たな算定制限、減算措置が導入された問題について、保団連は「戦後の日本の医療を支えてきたのは、患者の身近にありながら、専門性を高く有した診療所、有床診療所、中小病院など、複数の医療機関の連携である」との観点から、同算定制限、減算措置の撤回を要請。特に前医療課長が中医協で「保険局医療課の専権事項だ」と述べ、課長通知で規定している点を指摘し、予算上の措置でないため即時撤回するよう要請した。

 また、京都協会からは同算定制限の撤廃を求める署名308筆及び事例136件を提出。加えて、7月に実施した近畿2府4県の精神病床を中心に持つ病院を対象にした調査(対象130病院、回答77病院、回収率59%)で、他医受診が必要なケースが「よくある」との回答が64%もあると報告されていること、30%減算について「診療行為が重複していないのに減算は不当」88%、「数字の根拠が分からない」61%の病院が考えていること、包括病床における70%減算について他医側の診療報酬が「70%に達しない」86%、「70%以上」0%と報告されていることを紹介。日本精神病院協会が保団連に対して「算定制限の完全撤回を求める」と表明されている程、標榜科が少ない精神科の病院が窮地に陥っている実情を訴えた。

 さらに、保団連から「包括病床入院中の患者も、DPC病院入院中の患者の他医受診時のように、合議で清算する方法では何故ダメなのか」と述べたところ、厚労省は「実施した行為に則した保険請求をしてほしい」と回答。これに対して保団連は「対診の場合は、対診医の診療行為は包括されていない範囲で出来高請求できる。何故、他医受診の場合は減算をさせるのか」と指摘したところ、厚労省は「患者が他医受診している時間、入院医療機関は患者を管理していないからだ」と回答。保団連は「付添う場合も多い。また、家族再診で投薬する場合も30%減算となっており、厚労省の理屈は実態に合っていない」と批判した。

 また「30%、70%減算の根拠は何か」との保団連の質問に対して、厚労省は「30%減算の根拠については、基本料に含まれる該当部分を計算せよとなると、医療機関の事務的負担が増大するため一律30%減算とした。ただし、根拠は示せない。70%の根拠は分からない」と回答。これ対して保団連は「他医が算定すべき初・再診料に比して30%減算は事務負担云々以上に負担だ。厚労省が『実施した行為に則した保険請求をしてほしい』というなら、入院・外来とも双方請求できるべきだし、少なくとも合議で清算する理屈が成り立つのに、30%、70%減算という根拠のない数字で算定制限を加えるのはおかしい」と詰め寄った。厚労省は、最後まで30%、70%減算の根拠を示せず、「調査してみないと分からない」と述べるに留まった。保団連は、今回提出した調査事例を中医協に提出して検討を促すよう要請した。

同一建物居住者に対する訪問診療の調整の必要性認める

 今回の改定で、居住系施設以外のマンション等集合住宅への訪問診療で「1人なら830点、2人以上なら各々200点」という減算が導入された問題で、厚労省は「830点を不当に算定している事例を解決したいという視点から改定した」と回答した。一方、京都協会は府内在宅時医学総合管理料届出医療機関に対して2月に行ったアンケート結果を提示。「アパート、マンション等では、一度に訪問する平均患者数は約1・2人。高齢者専用賃貸住宅でも約3人との結果が出ており、非常に乱暴な改定だ」と指摘した。これに対して厚労省は「今後中医協で議論することになると思うが、点数を段階にすれば良いか」と、調整の必要性に言及した。

 保団連は中医協での議論を要請するとともに、住江会長から「830点を不当に算定している医療機関があるから同一建物居住者複数名は200点に減額したというのは、向本医療指導管理官の問題と同じだ。最初から医療機関を悪と前提したやり方だ。真面目にやっている開業医について評価すべきだ」と指摘した。

医療機関連携を困難にする指導管理料の算定制限は撤回を

 複数医療機関による異なる在宅療養指導管理料の算定制限について、厚労省は「改定以前は算定できなかったが、今回から紹介月については算定できることとした」と、誤った解釈を繰り返した。保団連は事実誤認を指摘すると同時に、「鈴木医療課長の『本当に在宅医療をやるなら、複数の医師、あるいは複数の診療所が協力しなければできない』との発言(8月19日、メディファクス記事)とも乖離した改定だ。各指導管理は技術が異なる。専門科の医師が連携して行う必要がある。算定制限を撤廃しなければ、重度の患者を在宅で診られなくなる」と指摘したところ、厚労省は回答に窮した。

 その他、明細書発行義務化の撤回も要請した。最後に京都協会理事会が9月14日の理事会で決定した抗議文(本紙9月20日号既報)を直接提出した。

 今回の交渉では、京都協会が行ったアンケートにより実態を明らかにして改善を迫った点が有効であった。改めてアンケート調査の有効性が確認された。

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