厚労省が社会保障改革案 震災受け一層の給付抑制方針  PDF

厚労省が社会保障改革案 震災受け一層の給付抑制方針

 社会保障と税の一体改革案を6月中に取りまとめる「社会保障改革に関する集中検討会議」(議長:菅直人首相)に、厚生労働省による社会保障改革案が5月12日提出された。

 集中検討会議は、昨年12月に一体改革案を取りまとめる方針を決めた閣議決定に基づき、2月から検討を開始。自公政権時代の「社会保障国民会議」と「安心社会実現会議」の座長を委員に加え、その路線を継承。震災でいったんは中断したものの関係先からヒアリングを重ね、4月27日から再開した。再開にあたり有識者委員からは、震災復興により財政的な制約が強まっているとして、「一層の優先順位の明確化、給付の重点化・選択と集中による社会保障の機能強化を進めることが必要」と、給付抑制が強く打ち出されている。また、この日取りまとめられたヒアリング意見には、「より低コストでより良い医療・介護サービスを提供できるよう工夫する余地は大きい」とも述べられている。

 これを受けての厚労省案は、低所得者対策や貧困・格差対策に一定の配慮をしながらも社会保障費用の抑制の方向を、「世代間公平」と「共助」を柱に盛り込んだ。高齢世代が相対的に手厚い給付を受ける制度から現役世代や将来世代に配意した制度の転換、「共助」をベースとしたセーフティネットの構築などが打ち出されている。また、東日本大震災を受け、被災地においてどのような社会像・地域像を実現するかが重要な課題と位置付け、「共助」を軸とした「新たな安心して暮らせる地域社会」モデルを示すことも提案。

 医療・介護分野では、下掲のような施策を診療・介護報酬改定に盛り込むとともに一括的な法整備を行うとしたほか、新成長戦略に基づく医療イノベーションの推進、等が列挙された。

 ただしこの日の提案には民主党との関係から具体的改革案も財政試算も盛り込まれていない。民主党内には消費税増税に対するのと同様に社会保障政策充実を掲げたマニフェストと矛盾する給付抑制への反発が根強い。5月10日には長妻前厚労相ら有志議員が「あるべき社会保障と財源を考える会」を立ち上げ、「性急な消費増税」に反対することを表明。給付の重点化についても十分な論議を求めている。

 民主党「社会保障と税の抜本改革調査会」(会長:仙石由人代表代行)が近くまとめるとされる改革案には、医療費の自己負担割合を中学生以下1割、20歳未満は2割へ引き下げる一方、軽減措置で1割に抑えている70〜74歳は、本来の2割に戻すと例示。総合合算制度導入の検討や高額療養費制度を見直し、財源として外来の窓口負担に一定額を加算する「受診時定額負担制度」をセットで導入。介護保険制度で40歳未満にも保険料負担を求めること、などが盛り込まれているとされる。

 19日に開かれる集中検討会議には、医療・介護分野の具体策が厚労省から示される。さらに5月末には、25年までに必要とされる社会保障費を試算し、消費税増税議論が本格化する。

厚労省「社会保障制度改革の方向性と具体化」(5月12日)より

医療・介護

医師確保・医師の偏在是正

病院・病床の機能分化・機能強化

在宅医療を支える病院、診療所等の計画的整備

多職種の連携、役割分担の見直しによるチーム医療の推進

地域包括ケアシステムの確立

非正規労働者への被用者保険適用拡大

市町村国保財政の広域化と低所得者対策の強化

医療イノベーション

革新的医薬品・医療機器の開発と実用化推進

ドラッグ・ラグ、デバイス・ラグへの対応

低所得者対策

制度横断的な利用者負担総合合算制度(仮称)の導入検討(番号制度導入が前提)

高額療養費制度の見直し

国保・介護保険の低所得者対策の強化、等

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