医療安全対策の常識と工夫(40)  PDF

医療安全対策の常識と工夫(40)

トラブルの気配?チェック(2)「適応」

 こんなことになるなら、そのような薬を飲むんじゃなかったとか、そんな治療は受けなかったなどといったクレームも、我々が患者さんからしばしば聞かされる言葉です。これらも医療行為の結果が悪かった故の発言ということなのですが、それを受ける医療機関側は、道義的責任を感じることは別として、予想外の結果が出たということのみで、理性的判断を誤らないようにしていただきたいと思います。

 具体的にはまず、他により良い医療行為の選択肢はなかったかなど、自分の行った医療行為の「適応」の有無をご確認下さい。もちろん、医師の裁量の部分があることは承知していますが、可能であれば文献的にも証明できれば、患者さん側に対しても説得力が増して有効でしょう。万一、他に有効な医療行為の選択肢があった場合には、医療機関側に賠償責任が発生する可能性も出てきますが、その時点で(最も)有効であったと判断される選択であったならば、上記のような患者さんのクレームに対応できる筈です。

 つまり、現在の状況にクレームを付けている患者さんに対して、医療機関側は過去に遡って「経過」を説明する訳です。結果が悪かったことは患者さんにも医療機関側にも当然の事実として前提にある訳ですが、それだけを前提にして話を進めても、問題は解決し難いということです。経過の把握こそが、医療には不可抗力や予見不可能性が横たわっているという現実の対処方法と思われます。ただし、患者さんが現時点で辛く困った状況にあることは、間違いない訳ですから、言い訳がましくとられない工夫が必要でしょう。以前にもお話しした通り、現在の患者さんの様子を伺い、場合によっては事後の治療を続行しながら、並行して患者さん本人や家族の方に説明をするのも一つの方法でしょう。

 次回は第3のチェック項目である「手技」についてお話しします。

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