医療ツーリズムについて意見交換 コミュニケーション委員会開く  PDF

医療ツーリズムについて意見交換 コミュニケーション委員会開く

 医療ツーリズムとは、「医療を受ける目的で他の国へ渡航すること」を意味し、外国人旅行者を自国へ誘致し、観光とセットで医療サービスを提供するインバウンドと、日本の医療サービスを国外に輸出するアウトバウンドを総称している。前者を行う国は、タイなど東南アジアを中心に世界で50カ国を超え、医療ツーリストは年間600万人程度と推定される。日本でも政府の新成長戦略の中で、「国際医療交流」として新たな成長分野の一つとして押し出し、注目を集めている。

 今回のコミュニケーション委員会(10月23日)は、「医療ツーリズムの概観と問題点」をテーマに、京都民医連中央病院院長吉中丈志氏に解説いただいた。地区から14人、理事3人が出席、岡田楯彦代議員会議長の司会で進められた。

 吉中氏は医療ツーリズムの問題点を、以下の4点に集約。(1)医療分野に市場原理が導入される。(2)混合診療の全面解禁につながり、国民皆保険の空洞化が進む。(3)医療崩壊や医師不足など国内の医療危機を深化させる。(4)医療機関に対する株式会社の影響力が強まり、営利主義が医療提供体制に深く浸透するなどの可能性を示唆した。

 各地区からは、「国際的な動きであり、流れを止める術はないだろう」「一定のルールを決めて行えば問題ない」との意見もあったが、「国際医療交流の位置づけとして『先端医療』を推奨しているが、営利目的で医療分野に市場原理を導入しようとする医療ツーリズムには賛成できない」など、様々な意見が出された。また北部地区を中心として、「医師不足により、地域の患者を診るので手一杯。営利や集客目的の医療サービスに注力し、地域医療がないがしろになるのであれば本末転倒である」との声もあがった。

 さらに、医療格差が拡大することも懸念される。「患者にとって、富裕層と貧困層で受けられる医療に格差が生じることはもちろん、診療する医師によって値段が違うなど、医師にも格差が生まれる可能性もある」との意見もあった。

 協会からは、日本では人材不足のほか、語学の壁、価格競争力が乏しいことなどを理由に「急速には発展しないのではないか」とした。その一方で、「医療の地域格差が生まれることは食い止めなくてはならない。地方分権による国保の都道府県単位化のほか、医療ツーリズムの流布もその要素になることは十分に考えられる」との認識を示した。

 医療の国際化、地域主権の流れに加え、市町村財政が逼迫するなかで、医療を「売り物」として扱われることに多くの医師が疑問を感じている。吉中氏は最後に、「観光とセットで医療サービスを提供するインバウンド形式の医療ツーリズムは、多くの自治体が検討しており、京都は格好の場である。我々開業医にもなんらかの役割が与えられる可能性もある。医師の中でも価値観は様々だが、しっかりと議論を行う必要があるだろう」と結んだ。

医療ツーリズムの問題点が指摘された委員会
医療ツーリズムの問題点が指摘された委員会

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