医界寸評  PDF

医界寸評

 世界が不穏な雲行きである。先週は、ギリシャの国民投票をめぐって世界中がその成り行きに注目した。今週はイタリア。何かと物議を醸してきたベルルスコーニ首相が辞任に追い込まれた。驚きの女性スキャンダルや問題発言の数々が伝えられても、9年という長きにわたって君臨できるなんてさすがイタリアと感心していたがついに退場。

 ▼イタリアが財政破綻したらその影響はギリシャの比ではない。フランスに波及し、イギリスに及ぶ。ユーロ圏で、唯一助け船を期待されるドイツが応じられるのか。ドイツの税金は50%に及ぶ州もあり、ギリシャ救済の際にも「楽して暮らす他国民のために、勤勉に働く我々が貢がされるのか」という声は高かった。

 ▼アメリカも酷い。失業率9%が常態化し、フードスタンプ(食料費補助制度)受給者が15%、アメリカ国民の15人に1人がこの制度に頼る貧困層に。さらに年間所得5570ドル以下の超貧困層が6・7%に上るという。

 ▼日本だって負けていない。生保受給者が205万人に達し、戦後混乱期のワースト記録を超えた。働き盛り世代の失業の末の生保頼みが急増しているという。

 ▼世界の貧困拡大は深刻だが、日本は敗戦後のどん底生活の中から国民運動を繰り広げ様々な規制を設けて社会制度を築いてきた。医療における国民皆保険制度はその最たるものだろう。TPP参加を受け入れて、大事な成果を壊してはならない。(さ)

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