代議員月例アンケート(58)統一地方選挙を前にして  PDF

代議員月例アンケート(58)統一地方選挙を前にして

実 施=2011年3月7日〜18日 回答数=21
対象者=京都府保険医協会代議員 95人 回答率=22%

 統一地方選挙が迫ってきた。地方選挙ではあるが、参院選挙後の菅政権に対する民意を占うという意味でも重要な選挙と思われる。現在は震災対応で中断しているものの、菅政権は「地域主権改革」の名のもとに、「義務付け・枠付けの見直し」「一括交付金化」を進めるなど地方分権の推進は継続しながら、「税と社会保障の一体的改革」を掲げ、消費税増税をもくろみ、TPPへの参加を目指すなど、マニフェストの見直しやこれまでにない政策を打ち出し、総選挙で示した「反構造改革」的看板をいよいよ下ろそうとしている。一方で起こっているのが、地方での既成政党や議会への激しい攻撃である。名古屋市の河村市長や大阪府の橋下知事は、反対勢力を非難するだけではなく、それぞれ減税日本と大阪維新の会を立ち上げて、出直しの名古屋市議選では減税日本が第一党となり、大阪維新の会も大阪都構想の実現を目指して、大阪府議会、大阪市会、堺市議会でそれぞれ多数を占めることを狙うなど地域政党の動向に注目が集まっている。このように、国政では民主党政権が大きく舵を切り始め、他方で地域政党をキーワードにした地方政治の変化が露わになる中で行われる統一地方選挙について、代議員の意見を聞いた。

09年民主大勝の理由

 はじめに、2009年秋の総選挙での民主党大勝の理由を聞いた。「自民・公明政権がすすめてきた構造改革路線が生み出した『貧困』『格差』への批判」が71%、「『国民の生活が第一』を掲げた民主党マニフェストへの期待」が57%、「民主党結党以来の本来方針である構造改革推進により、経済グローバル化に対応した国づくりへの期待」が24%(図1)で、反構造改革への政策転換期待と給付拡充政策への期待が政権交代を実現したという評価であった。

図1

首長・議員の役割は

 続いて、自治体の首長にどういう仕事を期待しているかを聞いた。「国・政府に対し、構造改革のもたらした市民生活の困難を打開すべく、必要な制度改善・財政措置を要求すると同時に、自治体独自の医療・福祉・経済政策を立案・実行し、地域住民の生活と健康を守ること」が76%、「強いリーダーシップにより、地域主権改革の実現を目指すと同時に行政改革を進め財政再建を達成すること」が19%(図2)で、ここでも反構造改革と生活重視の政策への期待が多数を占めた。

図2

 地方議員に期待する仕事については、「自治体首長の独善や暴走を抑えるチェック機関としての役割を果たすとともに、地域住民の生活実態から要求を集約し、それに基づいた施策の実現を首長・当局に対し求めること」が71%、「自治体首長の仕事を補佐し、地域主権改革の実現を目指すと同時に行政改革を進め財政再建を達成すること」が19%(図3)で、議会が本来の役割を果たすことを求める意見が多く、首長と一体的に地方主権改革を進めることには、あまり支持は集まらなかった。

図3

民意問うべき課題は

 次に、国政レベルの課題に対する影響という点からみて、今回の統一地方選挙を通じて民意を問うべき課題は何か聞いた。「菅政権が進めようとしているTPP受け入れ、消費税増税と規制緩和を前提にした社会保障成長戦略など、『構造改革』に回帰する路線への賛否」が71%、「国会運営の行き詰まりを理由に模索されつつある『民主・自民二大政党による大連立政権』の是非」が57%、「『地域主権改革』をスローガンに、橋下大阪府知事、河村名古屋市長などトップダウン型の首長が、議会を仮想敵化し、それと闘う形をとった構造改革路線を推し進めることへの賛否」が24%(図4)で、民主党のマニフェストの変更や、そもそも選挙では争点に含まれなかった方針について、あらためて民意が問われるべきとの意見であった。また、「新しい福祉国家をめざすことへの賛否や財源のあり方」を争点にすべきという意見もあった。

図4

地方議会改革はどうか

 地方議会改革が叫ばれ、京都市会では京都党が議員定数削減条例の直接請求を行い、大阪府議会では大阪維新の会の提案に背中を押される形で、議員報酬の3割カットを決めた。このように、議員定数と報酬の削減が議会改革の中心となっていることについて、どう思うか聞いた。「民間の雇用情勢が厳しい中、公務員や議員だけが身分や給与を保障されているのはおかしく、自治体財政の悪化からも経費削減は必須だ。議会が率先して身を削るべきであり賛成」が43%、「首長や行政に対する議会のチェック機能について、市民に不信感があることは事実だが、議員が減ると少数意見が反映されにくいし、地盤や知名度のない新人が議員になるのも難しい。また、極端な報酬の削減や日当制の導入は、裕福な人しか議員になれない事態を生む可能性もある。議会のあり方について議会自らが市民に問いかける必要はあるが、短絡的に定数・報酬を削減することは、問題解決にならず反対。むしろ、民主的な議会運営ルールや住民による監視、議員の政策力強化策を検討すべきである」が38%(図5)で、若干賛成が反対を上回った。その他にも、「議員は減らすべきでない。報酬は減らすべき」という意見が複数あり、議会と議員に対する視線はことのほか厳しいことが明らかとなった。

図5

統一地方選への対応は

 そして、今回の統一地方選挙にはどういう対応をするか聞いた。「支持政党(その推薦を含む)の候補者に投票する」が24%、「誰も投票したい候補者がいない」が19%、「支持政党に関わりなく、支持する政策の実現に力を発揮しそうな候補者に投票する」が10%、「まだ決めていない」が38%(図6)であった。

図6

 このように、今回の統一地方選挙は、単なる同時地方選挙という位置付けではなく、国政における民主党政権のこれまでの政策とこれからの政策について、その評価が問われるべきという意見が多く寄せられた。それとともに、首長と地方議員のあり方についても、現状への強い不満があることが窺えた。しかしながら、単純に首長の強いリーダーシップによる改革を求めるということではなく、国政に対する要望の強化や独自の政策実行力を求める意見に支持が集まり、首長と地方議員が自治の本分に立ち返って、地方自治を進めることが求められていることが窺えた。

 東日本大震災の発生を受けて、国にはリーダーシップが求められているとともに、住民の地域生活への地方自治体の果たすべき役割の大きさが、あらためて認識されている。この選挙を期に、その切実な要求にしっかりと応えることができる地方自治の実現を目指すことがいま求められている。

ページの先頭へ