代議員アンケート50/京都協会発の「社会保障基本法(案)」が提示する理念・考え方について

代議員アンケート50/京都協会発の「社会保障基本法(案)」が提示する理念・考え方について

調査期間 4月3日〜17日

対象者=97人 回答数=24(回答率25%)

 協会は2004年から、今の社会保障のあり方を根本的に見直し、社会保障を充実させ、社会保障が国民のしあわせにつながる仕組みの実現を目指して「社会保障基本法」を創る取り組みを始めた。そして07年9月に「社会保障基本法(案)」を発表し、法案の立法化に向けて運動を続けており、5月末現在で15団体、196人から賛同を得ている(詳細は「社会保障基本法」立法化を求める会ホームページhttp://whats-social-security.com/)。今アンケートでは、「社会保障基本法(案)」が提示する理念・考え方について、協会代議員の意見を聞いた。

■憲法25条の実現目指す基本理念に92%が賛成

 問1では、憲法25条の実現を目指すことを基本理念に明示していることについて、次のように聞いた。

 「いま、日本の社会保障は、社会保障費の伸び2200億円抑制に象徴される構造改革によってその機能が弱められ、憲法25条がないがしろにされている。そこで社会保障基本法(案)では、改めて憲法の諸規定にてらして、『権利としての社会保障制度の確立』を掲げ、すべての社会保障施策はこの権利の実現のために実施されなければならないことを宣言した。このことの是非について」

 賛成     92%

 反対     4%

 分からない  4%

〈自由記述〉

 ◇全ての原因は、K首相のもと、新市場経済原理主義による社会構造の破壊をもたらした、大企業優先の社会政策にあると思う。

■トータル保障を求めていることに88%が賛成

 問2では、住宅から医療まで、個々の国民の暮らしをトータルに支える保障を求めていることについて、次のように聞いた。

 「現在の社会保障制度は多岐に渡りますが、ワーキングプアに代表される、子育て世代を中心とした働く貧困層への支援など、ほとんど手つかずあるいは不十分な支援しかない分野もある。そこで社会保障基本法(案)では、すべての人の生活をトータルに支えるために、住宅保障など従来社会保障の範疇とは考えられてこなかった施策も社会保障の内容に加え、『健康で文化的な最低限度の生活』がすべての制度に即して保障されなければならないことを訴えている。このことの是非について」

 賛成     88%

 反対     8%

 分からない  4%

〈自由記述〉

 ◇企業の自己資本の蓄積より、従業員の雇用を安定させる社会的なコンセンサスを政治の中で確立する施策を要望する。

■国と自治体の財政責任の明確化に92%が賛成

 問3では、国と自治体の財政責任を明確にすることについて、次のように聞いた。

 「財政健全化の御旗のもと、社会保障費の伸び2200億円を抑制する方針がとられてきた。しかし、その結果診療報酬・介護報酬はマイナスで推移し、現場では医療・介護崩壊を招いている。そこで社会保障基本法(案)では、国および地方が、財政上の理由から社会保障推進の責務の遂行を怠ったり、国民の社会保障を受ける権利を制限してはならないとしている。このことの是非について」

 賛成     92%

 反対     4%

 分からない  4%

〈自由記述〉

 ◇一官僚の医療亡国論から始まり、聖域なき構造改革の結果がもたらされた社会保障費削減は、今日の危機的状況を想定していなかったように思える。

■現場従事者を守り育てる施策義務化に92%が賛成

 問4では、現場の従事者を守り育てる施策を義務化することについて、次のように聞いた。

 「社会保障分野の従事者の処遇も悪化の一途をたどっている。3%アップの介護報酬改定が実施されたが、これまでのマイナス分を補えるレベルではなく、処遇改善までには至らない。医師・看護師不足の深刻さも一向に解消されず、生存権保障の担い手たる社会保障従事者の生存権が脅かされている。そこで社会保障基本法(案)では、国および地方が社会保障従事者への適切な処遇と安定的確保および技術水準の維持・向上に必要な施策を講ずることを定めている。このことの是非について」

 賛成     92%

 反対     0%

 分からない  4%

 無回答    4%

〈自由記述〉

 ◇厚労相も現場の窮状を理解していると思うが、より効果的な対応を思い切って実行していただきたい。

■国民への説明義務づけには96%が賛成

 問5では、国は国民に制度を理解させる義務を負うことついて、次のように聞いた。

 「『消された年金』問題や、生活保護制度の『水際作戦』のように、国が正しく社会保障制度を運用・広報しないことによって、本来受けられるはずの社会保障が受けられない事態が後を絶たない。
そこで、社会保障基本法(案)では、国と地方に国民に対する教示義務と説明義務を規定することによって、すべての者が社会保障施策の利用から阻害されることのないようにしている。このことの是非について」

 賛成     96%

 反対     0%

 無回答    4%

〈自由記述〉

 ◇従来からの官僚(行政)へのチェック体制がいかにずさんであったかを示すもので、政治の強い介入を望む。

■当事者の政策立案への参画には79%が賛成

 問6では、当事者の意見によって政策を創ることについて、次のように聞いた。

 「社会保障制度の方向性の決定や個別制度の変更に際して、当事者はパブリックコメントなどによって意見を表明することはできても、政策立案そのものに参加することはほとんどできないのが現状である。そこで、社会保障基本法(案)では、法律の制定・改廃に際してはその給付の対象となる者の利益を代表する者を含む第三者機関で意見を聞かなければならないとし、第三者機関はその給付の対象となる者の代表者が過半数以上で構成されることを定めている。このことの是非について」

 賛成     79%

 反対     4%

 分からない  13%

 その他    4%

〈自由記述〉

 ◇一般論ですが、給付の対象となる者の利益を代表するものは、諸々の状況・事情の変化によらず、常に自らの利益のために意見を表明するのではないかと懸念します。
◇利益を代表する者が過半数以上であれば、負担する者の意見が反映されないこともありうるので、政治家・行政・国民の意見が反映されるべき。

■基本法の実現に向け取り組みを一層強化

 以上のように、6問中4問で9割以上の賛意を得るなど、「社会保障基本法(案)」の提示する理念・考え方については、概ね賛成の意見であった。ただし、問6については唯一賛成が80%を割り、自由意見でも、当事者の利益が重視され過ぎることへの懸念が寄せられた。

 その他には、財源についての意見が寄せられ、「消費税にて社会保障費を充実せざるを得ないのでは」「今や財源をどこに求めるか、より具体的な案を提示すべきところにきていると思う」と、アンケートで問うた理念・考え方を実現するための、具体的裏付けについての議論を始めるときがきているとの認識が示されている。

 協会では、この結果を力にして、「社会保障基本法(案)」への賛同を広げる取り組みを一層強めるとともに、法案の中身ついても、いただいた意見を参考に、より良いものにしていきたい。そして、いかにして「社会保障基本法(案)」の理念・考え方を実現していくかについても議論を進めていきたい。

ページの先頭へ