代議員アンケート(48)

代議員アンケート(48)

減点予備軍!?入院中の患者の外来受診

調査期間=1月22日〜2月13日
対象者=117人 回答数=89人(回答率76%)

 保険医協会は、1月22日に開催した第176回定時代議員会に合わせて、全代議員並びに代議員会出席者を対象に「他医療機関入院中の患者の外来受診状況」についてのアンケートを実施した。これは、他医療機関入院中であることを理由にしたと思われる減点事例が、京都府内においても発生しているため、その実情把握を行うことを目的に実施したもの。アンケートは代議員会当日に配布又は送付。2月13日までに89通を回収した。回収率は76%。以下、結果の概要について報告する。

 回答者の内訳は、診療所の開設者・管理者・勤務者が83人(93%)。病院の開設者・管理者・勤務者が5人(6%)であった。無回答は1人。主な診療科は内科が36人(40%)で最も多く、以下整形外科10人(10%)、外科6人(7%)と続いた。
 開業地域は、京都市・乙訓地域が63人(71%)と半数以上を占め、山城北・山城南地域が12人(13%)、丹後・中丹・南丹地域が7人(8%)となっており、無回答が7人あった。

意外と多い入院中患者の外来受診

 昨年1年間で、他医療機関入院中の患者を、外来で診療したことがあるかどうか尋ねたところ、「ない」との回答が54人(61%)と多かったが、一方で「ある」との回答が29人(33%)あり、約3分の1が入院中の患者を外来で診療した経験があることが分かった(図1)

図1 他医入院中患者の外来診療の経験

 「ある」との回答者に、その頻度を尋ねたところ、1年に2〜3件との回答が最も多く17人と、59%を占め、半年に1〜2回は経験していたという結果が出た(図2)。

図2 他医入院中患者の外来受診の頻度(1年間)

入院中の患者から投薬求められる

 今までに他医療機関入院中にも関わらず、患者や家族から投薬を求められたことがあるかどうかを尋ねた。「ある」との回答が66人と、実に74%に上った(図3)。また、その頻度については、半年に1回程度との回答が最も多く28人(42%)となった。また、2〜3カ月に1回程度との回答が13人(20%)、1カ月に1回程度との回答が6人(9%)あることから、「ある」との回答者のうちの実に70%以上、回答者全体の半数以上で、他医療機関入院中にも関わらず、外来で投薬を求められることが、半年に1回以上の頻度であるという現状が明らかとなった(図4)

図3 他医入院中患者・家族から投薬を求められた経験
図4 他医入院中患者に投薬を求められる頻度

把握の方法が確立されていない

 外来窓口における入院中であるかどうかの確認について、特に健康保険上定められた方法や、義務付けられた取扱いはないが、確認を行っているかどうかの質問に対して、「窓口で尋ねる」との回答が9人(10%)あった。外来患者の多くが入院中でないことを考えると、非常に手間ではあるが、過誤防止を徹底しているものと思われる。

 一方、「患者からの申し出があった場合のみ把握」との回答が70人(79%)と圧倒的多数を占め、患者からの自己申告に頼っている現状が浮き彫りとなった(図5)

図5 他医入院中の確認

入院中の患者に無防備なところも

 患者等からの申し出等により入院中であることが判明した場合の対応方法について尋ねた。

 「入院先で治療・投薬してもらうよう告げている」との回答が52人(58%)、「算定できるもののみ算定」との回答が17人(19%)と、減点等がないよう対応している医療機関が多いことが分かった。

 一方で18人(20%)は「通常の外来と同様に算定」と回答。5分の1の回答者が、患者の入院先及び請求内容によっては、いつ減点されてもおかしくない危険な状況にあることが分かった(図6)

図6 他医入院中であると分かった場合の対応

算定制限の可能性知らないところも

 入院中の患者が外来受診した場合に、当該患者が療養病棟等包括点数の病棟に入院している場合等に、算定できる点数に制限があることについて、知っているかどうかを尋ねた。

 「知っている」との回答が37人(42%)、「少しは知っている」との回答が34人(38%)と多数を占めたが、一方で、「知らない」との回答が18人(20%)と、「入院中の患者であっても通常の外来と同様に算定」と回答した数と同様、回答者の5人に1人を占めた(図7)

図7 他医入院中の場合の算定制限を知っているか

「入院中」が理由の減点はまだ多くはない

 入院中であることを理由にした減点を受けたことがあるかどうかを尋ねた。

 「ない」との回答が74人(83%)に上った一方、「ある」との回答が1人(1%)あり、「わからない」との回答も14人(16%)あった(図8)

図8 他医入院中を理由に減点、返戻受けたことあるか

 「ある」との回答者は、実際の減点事例として、療養病床に入院中の患者と、特定入院料やDPC採用病院以外の一般病床に入院中の患者であったと回答していた。

窓口での確認方法の確立が必要

 今アンケートで、入院中であるにもかかわらず、外来受診をする患者が現実としてあり、また外来を担当する医療側の対応方法等があまり周知されていないことが分かった。専門外等の理由により外来受診をしているケースもあると思われるが、一方で「いつも診てもらっているから」と考え、入院中に他医療機関に外来受診することに、何ら抵抗を感じていないケースがあることも想定される。

 このような状況を改善するためには、どのような方策が必要なのか。特定入院料等が算定されている患者の場合、投薬料や注射料までも算定できないとされている、入院中の患者の他科受診に関する算定制限を、まずは見直す必要がある。また、例えば、入院中の患者が他医療機関に受診の必要がある場合には、診療情報提供書の交付と当該患者の入院料の種別記載を義務付け、現在、原則その算定が想定されていない入院中の患者に対する「診療情報提供料1」の算定を認める。入院中であることが分かる上、入院先でもできることを外来受診させることを防げる。それを受ける外来側は、「診療情報提供書」により入院中である旨確認した場合には、それに応じた診療報酬請求を行う。この場合、ひと手間必要ではあるが「診療情報提供書」とともに、外来での算定方法を合わせて示すと便利である。そして「診療情報提供書」の確認ができなかった場合は、外来を担当した医療機関には非がないため、入院中を理由にした減点は一切行わない。外来受診が入院先も承知していないということであれば、入院先の医療機関にも非がないということになる。

 以上のように、外来受診した患者が入院中か否かについて、窓口で系統的な対応ができるよう、今後の診療報酬改定等で改善、方法の確立が望まれるとともに、現状においても、不要な減点査定につなげないため、外来患者が入院中であるということが判明した場合の対応方法について、さらに周知していく必要がある。(現状の対応方法については後日グリーンペーパーで掲載予定)

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