事故調 制度の成り立ちとポイントを解説 10月の運用開始を前に  PDF

事故調 制度の成り立ちとポイントを解説 10月の運用開始を前に

  第47回産婦人科診療内容向上会が8月1日、京都市内のホテルで開催された。参加者は81人。公益社団法人日本産婦人科医会副会長の岡井崇氏が「医療事故調査制度 紆余曲折の成立とその論点」と題して講演を行った。

 産婦人科診療内容向上会レポート

  京都産婦人科医会会長の田村秀子氏、協会理事長の垣田さち子氏のあいさつに続けて、支払基金京都支部審査委員の山下元氏から「保険請求の留意事項と最近の審査事情」について解説がなされた。
 続いて岡井氏より「医療事故調査制度 紆余曲折の成立とその論点」というテーマで、本年10月よりスタートするこの新しい制度の成立までの過程と実際の運用法、問題点について講演していただいた。岡井氏は産科医療補償制度原因分析委員会の委員長としてもご活躍され、新しい医療事故調査制度の開始にあたっても多大なご尽力をなされており、リアルな情報を散りばめながら、非常に理解しやすく解説していただいた。この制度の内容について岡井氏の講演内容をまとめて以下に記載しておく。
 従来の医療法の一部を改正し、新しく導入される医療事故調査制度の整備目的は、医療の安全を確保し、医療事故の再発防止を行うことであって、医療者の責任追及を目的とするものでない。改正された医療法第6条の10によると病院、診療所又は助産所の管理者は、医療事故が発生した場合には、医療事故調査・支援センターに報告しなければならないとされた。報告すべき医療事故とは過誤の有無を問わず医療に起因し、又は起因すると疑われる死亡又は死産であり、管理者が予期しなかったものとされる。予期しなかったとは、当該患者に死亡、死産が予期されることについて説明、記録がなされていなかった場合であり、医療受給者の理解を得るように努めなければならない。医療事故が発生すれば病院は、まず医療事故調査を行わなければならない。調査が終了すれば管理者は遺族に報告内容を説明し、遅滞なく結果を医療事故調査・支援センターに報告しなければならない。報告内容は個人の責任を追及するものではなく、可能な限り匿名性の確保に配慮しなければならない。センターへの報告事案に問題があるときは支援団体(都道府県医師会など)に相談し、最終的に報告するかは管理者が決定する。
 産婦人科訴訟は福島の大野事件(前置胎盤での死亡例)の後、産科医療の危険性がクローズアップされたこともあって減少していた。さらに産科医療補償制度が創設されて減少傾向である。各事例において第三者機関で原因分析報告書が作成され家族へも送付、通知されるようになったことがその一因ではないかと考えられる。同様に医療事故調査・支援センターも調査の結果は管理者と遺族に報告することになっている。まずは遺族の気持ちに寄り添って事実の説明を行うことが重要であると考えられる。センターに報告する事案は警察へは届け出る必要はないが、医療過誤がどのような場合に刑事事件化されるかといった点については今後の成り行きをみていく必要がある。
 以上、いよいよ今年10月に迫った医療事故調査制度の開始前にタイムリーな講演をしていただき、理解を深めることができた。
(左京・藤田 浩平)

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