主張/日本の医療を真に再生させる診療報酬体系の構築を

主張/日本の医療を真に再生させる診療報酬体系の構築を

 6月2日、鳩山首相は政治とカネの問題、普天間基地移転を巡る迷走劇、社民党の連立政権離脱の責任を取る形で小沢幹事長とともに辞任することを発表した。重要法案、サミット、参議院選挙をひかえ政治空白の長期化は許されず、景気低迷、デフレからの脱却のために、日本として確かな経済成長戦略を打ち出せる新政権の誕生を望みたい。

 もうだいぶん前のように感じられるが、今年度予算の執行はたかだか2カ月余前である。10年度政府予算は、過去最高の92兆円に膨らみ、国債発行額は税収37兆円を上回り、これも過去最高の44兆円を超える結果となった。

 10年度診療報酬改定は全体の改定率が0・03%、100億円弱にしかならないことが判明しており、実質ゼロ改定―これで「医療崩壊」を止められようか。さらに本体部分の4800億円、この9割以上が入院医療に振り分けられ、それも急性期、特定機能病院などの基幹病院に手厚い改定となり、救急医療崩壊の大きな原因である2次救急を担う急性期病院にとって、さほどの恩恵はないものとなっている。今次改定は、「医療崩壊」の事態から地域医療を再建するため、医療費抑制政策の転換、医療費全体の底上げを国の医療政策の中心課題に位置づけ、実施するべきであった。

 しかし今回、診療所及び中小病院への手当ては議論の外に置かれ、重点課題とされた救急、産科等の勤務医負担軽減対策も補助金削減とセットで実施されるなど、真の政策転換は図られていない。診療所再診料の引き下げ分200億円を病院外来に回すことによって喧伝されたプラス改定にもかかわらず、診療所にとってマイナス改定に等しく、このような改定では、地域の第一線で初期医療を担っている医療機関まで「医療崩壊」がさらに進み、日本の医療提供体制は再生不能の状況に陥りかねない。07年6月実施の経済実態調査で約17%だった収支差額赤字の医科診療所は、09年6月調査で約28%に急増しており、医療の再生産すら困難な診療所が増えている。

 09年1年間の医療機関の倒産は全国で52件(負債額301億5700万円)、これは07年の48件(同476億6200万円)を超え過去5年で最多となった(帝国データバンク)。00年からの4回連続のマイナス改定の影響は大である。結局、今次改定においても、(1)慢性期医療・日常診療の評価引き下げ(2)急性期医療や政策優先順位の高い部分へ重点投資、財源移転(3)医療機関の機能分化を促進する(4)平均在院日数短縮のため様々な策を導入(5)在宅医療点数は高く設定し参入を促すなど、ここ10年間の改定のキーワードがそのままあてはめられている。不合理な点数、療担規則改定には運用上の改善、撤回を求めて活動を続けるべきである。

 さらに12年度には医療・介護の同時改定が予定されている。急性期医療は医療保険で、慢性期医療は可能な限り「混合診療」が前提の介護保険にシフト、という改定にさせてはならない。

 新政権に対しては日本の医療再生への真の医療政策を望みたい。

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