主張/国民皆保険を如何に守っていくか  PDF

主張/国民皆保険を如何に守っていくか

1961年に国民皆保険が成立してから、50年のときが経過した。

 世の中の強者であれ弱者であれ、だれでも、いつでも、どこでも同じ水準の医療を受けることができるという、世界に類を見ない素晴らしい保険体制である。この国民皆保険が人々の健康を守り、世界でもトップを争う長寿国を作り上げたといえる。

 皆保険は成立当初から完成していたわけではなく、世の中の流れに左右されながらも、医療保障に対する国の取り組み、充実、発展により、70年代に老人医療無料というピークともいえる時代を迎えた。医療から排除されがちな弱者に含まれる老人たちに、多くの公費を投入して実現した医療保障であった。しかし世界の事情、日本の事情も少しずつ変化しつつある。83年にこの老人医療無料の制度が廃止された。成立時からずっと、国民の医療は国が持つという方向で歩んできたものが、公費の投入を抑制する方向に進み始めた。生活保障、医療保障を自助、共助、公助に分け、そのうち自助・共助を中心にウエイトを置き、対応できないものだけ公助もありうるという方向に進み始めた。特に医療保障は、その本来の姿は国の予算に合わせて決めるものではなく、まず保障ありき、であると考えている。

 今の公助の領域として、前期・後期高齢者、身体障害者、乳幼児、母子家庭、生活保護、精神疾患、特定疾患、結核治療、公害など多くの分野に広がっている。また生活の面も含め子育て支援、ひとり親家庭、重度心身障害児(者)・老人の健康管理などさまざまである。

 昨年、京都府民を対象として行われた福祉医療制度に関するアンケート結果から見ても、公助に多くの期待をかけていることがわかる。

 今年は、予想もしていなかった大震災による大津波とそれに続く福島第一原発事故など、国にとって今後どれほどの復興費用が必要になるか想像もつかない状況にある。

 国の方向転換、TPP問題など国民皆保険体制が揺らぎつつある現在、先人達が確立してきた優れたこの制度をいかに守っていくか、我々の知恵と行動力が試されている。

ページの先頭へ