主張/医療の安全と質の向上のために今必要なことは何か

主張/医療の安全と質の向上のために今必要なことは何か

 このたびの総選挙で、小泉内閣が推し進めた自民党政権による構造改革に、国民の審判がついに下った。国民は今の医療・介護・福祉政策に対して、相当の失望感と怒りを持っていたのであろう。

 事の発端は「三方一両損」の方針のもと、患者と保険者および医療機関の三者が痛みを分かち合う、医療制度改革と銘打った社会保障費の削減に始まった。さらに時期を同じくして、地域医療制度を十分に検討されぬままに研修医制度が変更となり、大学医局に依存していた地方の病院は、突然の医師不足に見舞われた。また、医療事故や訴訟問題がマスコミの一方的な報道にあおられる結果、産科、小児科や外科など、高いリスクを負う診療科を希望する若手医師の激減に追い打ちをかけた。

 安全で安心にくらせる社会の実現をうたった自民党の医療政策はことごとく失敗し、国民に不安と犠牲だけを与える結果となってしまった。医学教育の場である大学においても、法人化の名の下、経営第一主義の考えが導入され、すぐには結果の出ない地道な研究を必要とする基礎医学や、採算性の低い科への風当たりが強くなり、新研修医制度のひずみも加わり、大学で研究を志す若き医師も減ってしまった。

 問題はこれからである。ここまで崩壊してしまった医療・介護界を、社会保障費削減の撤廃や医学部定員を増やすだけでは、国民の期待するレベルどころか、元のレベルにまでも戻すことはできない。限りある資源財源の中で、国民が満足できる医療や介護を提供するためには、医療界自体も無駄を省いた自浄努力と、目先の利益に固執することなく、安全で質の高い医療を提供していく必要がある。我々医療者は、医療界の専門家として、新しい政権に対して、政策の基盤になる先を見据えたアイデアを提供していけるシンクタンクでなければならない。また国民に対しても、医療の安全と質の向上のために今必要なことは何かということを、積極的に説明していく義務がある。

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