主張/医師不足問題、医療費抑制政策の見直しが必要

主張/医師不足問題、医療費抑制政策の見直しが必要

 厚生労働省の「安心と希望の医療確保ビジョン具体化に関する検討会」は8月27日、医師養成数を増やすべきとする中間とりまとめ(案)を提示した。来年度には医学部教育・地域医療に支障を来たさない範囲で、少なくとも過去最大の医学部定員(8360人)程度を目指すべきで、将来的には医師養成数を50%程度増加させることを目指すべきであると提言した。

 06年末の医療施設に従事する日本の医師数は26万3540人、人口千人あたり2・1人で、米国の2・4人、イギリスの2・5人、フランスの3・4人、ドイツの3・5人より少なく、これを経済協力開発機構(OECD)加盟国平均の3・1人まで引き上げる必要があるとした。検討会の試算では医学部の定員を今後10年間毎年400人ずつ増員し、10年後に総定員を現在の50%増の1万2千人まで増やした場合、20年後に千人あたりの医師数がOECD加盟国平均並みに届くと推計している。

 中間とりまとめ(案)では(1)医師養成数のほか、(2)医師の偏在と教育、(3)コ・メディカル等の専門性の発揮とチーム医療、(4)地域医療・救急医療体制支援、(5)患者・住民の参画の分野に分けて、具体化に向けた方策が検討されている。(2)では現下の医師不足問題は診療科の偏在と地域の偏在という「二つの偏在」によって深刻さを増しているとし、医師数を増やすだけでなく、こうした偏在の問題に取り組む必要があるとし、外科をはじめ医師の技術を適切に評価するための技術料の検討、産科・救急・へき地などで勤務する医師等への手当の支給、初期臨床研修制度や後期研修制度のあり方の見直し等を提言している。(3)ではコ・メディカルがキャリアアップできる仕組みが必要であり、その数も増やすことが必要であるとし、(4)では地域医療の担い手の一つとして専門医としての総合医・家庭医のあり方等について検討すべきとし、(5)では「コンビニ受診」の抑制など地域医療を守る住民の取り組みへの支援などを提言している。

 この中間とりまとめ(案)にはいろいろと問題点は多いが、厚労省が医師不足の認識を示し、医師数の増加方針を示した点は評価できる。医師、とくに勤務医の過重労働の改善、患者の安全のため、医師不足問題改善対策を早急に実施することが急務であるが、その根源である政府の医療費抑制政索の見直しこそが、抜本的な解決策であると考える。

【京都保険医新聞_2008年10月20日_1面】

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