シリーズ/環境問題を考える(95)

シリーズ/環境問題を考える(95)

民主党マニフェスト

環境対策担当理事 飯田哲夫

 まず民主党議員との懇談会に提出した「民主党にすぐに実施していただきたい重点課題」から、高速道路無料化・自動車暫定税率廃止の問題について。

 自公政権が実施した高速道路通行料割引は、ETC搭載・週末限定にもかかわらず、既に自動車利用促進の兆候が見受けられる。さらにこれを今後無料化することによって引き起こされる変化を、環境自治体会議環境政策研究所が解析予測し、気候ネットワークから公表された。それによれば無料化は、個人・企業の自動車利用を加速させ、CO2排出量を増加させる一方で、鉄道・バス・フェリーなどの公共交通機関の利用を減少させ、その衰退から温暖化防止型の社会インフラが崩されていくと予測している。今後の政策は、公共交通機関の機能性を高め、自動車依存を下げ、環境を守り、そのうえで経済の再生を目指すべきである。

 道路特定財源諸税は、長く暫定税率によって税が上乗せされ、それが無駄な道路建設を促してきたといわれる一方、自動車やガソリンなどのエネルギー価格を上昇させ、炭素税と同様の抑制効果を果たしてもいる。この廃止は高速道路無料化と同様に、自動車利用を促進させ、CO2排出増加を促してしまうだろう。また地球温暖化対策税の導入の考えを示しているが、それと暫定税率廃止との関係が明確にされていない。

 次に地球温暖化ガス1990年比25%削減という目標と、そのための実効ある制度の導入、地球温暖化対策基本法の制定など積極的な地球温暖化対策の推進や、エネルギー供給に対する、環境への配慮、省エネルギー、再生可能エネルギーの技術・産業育成などを通じた供給の増加の推進などは支持したい。

 しかし、原子力利用に対して、安全を第一にしても、なお「着実に」取り組むとの方針には強く反対する。核燃サイクルのすべてが持つ安全性の問題、高速増殖炉や放射性廃棄物処理などの経済的負担、そして再生可能エネルギー開発などの遅れなどを考えれば、原子力依存から速やかに離脱すべきである。

 環境問題に積極的に取り組もうとする方針に敬意を表するが、全体的に見ると他の分野と矛盾するところも散見され、また具体的な方針がわかりにくいところもあるので、その解決と実行を強く要望する。

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