【会員投稿】洋ランと私

【会員投稿】洋ランと私

澤井公和(綴喜)


カトレヤ・ワーセヴィッチ forma セルレア(澤井の親株より実生にて造り出された青紫の色の珍しい個体、コロンビア産)

 昨日(7月13日)は、全日本蘭協会創立50周年の式典に日本蘭協会会長として招待され、東京へ行ってまいりました。全日本蘭協会の元会長である福原義晴氏(資生堂会長)や、伊奈のラン高森(ランの植物園)で腐生蘭等の研究をしている谷亀氏、その他東京カトレヤ原種研究会の面々と久々に対面して歓談してまいりました。

 洋ラン趣味の奥深いところは、美術品のコレクター等と違い、生(なま)の植物を育てるところにあります。現在絶滅が心配されるものの多い自然界の中で、自分自身で希少な植物を育てていることにより、自然の吐息を肌で実感として受け止めることができることは、大変素晴らしく、幸せなものと感じています。また、職業や身分をこえていろいろな方々と洋ランの育て方や楽しみ方について語りあい、お付き合いできる点にあります。


カトレヤ・ルデマニアナ forma アルバ ’テル’(純白に中心が黄色の美しい個体、ベネズエラ産)

 私は小学生の頃から、いろんな美しいものにあこがれてきました。珍しい蝶を追って野を走り、山野草を求めて山を歩き、夜空の星々をながめながらギリシャ神話を想い巡らし、また、詩歌の世界にも親しんできました。そして中学生の時に、洋ランと出会いました。

 以後40数年に渡り、一時は日本産のエビネなどにも取りつかれた時期もありましたが、ずっとこの洋ランの虜となってしまったわけです。


レリア・パープラータ ’フォルモーサ’(自然の色彩変異種、ブラジル産)

 はじめは、自作のビニールハウスで栽培の容易なデンドロビウムやコチョウランを作り、その後いろいろな洋ランを栽培してきましたが、ここ数十年は主にカトレヤ原種(南米のブラジル、コロンビア、ベネズエラ等が産地)の様々なものを集め、栽培するようになっております。数年前、英国王室蘭協会の審査委員長である、ヘンリー・オークレイ氏をわが家にお招きした際、氏は私のカトレヤ原種の写真(約3千点)をご覧になり、「世界的に貴重なもの。本としての出版が難しければ、是非ともCD−ROMとして残してほしい」と熱意をもってすすめられたこともありました。

 現在、約30坪の温室でカトレヤ原種約2千鉢、その他の原種数百鉢を栽培していますが、医学生の時から勤務医の時、そして開業してからも温室に入って、美しく咲いた花や蕾を見て楽しみ、そして何よりも元気な新芽をみてその株の次の開花を夢見るときは最も喜ばしく、日頃のストレスを忘れさせてくれる素晴らしい時間です。


(4)レリア・アンセプス ’キヨコ’(澤井が交配して作出したもの、メキシコ産)
(5)レリア・パープラータ ’ヨーコ’(青紫に線条が入る個体。澤井が交配して作出したもの、ブラジル産)

(編注)著者は現在、日本蘭協会会長、世界ワルケリアナ協会日本支部長、KTSカトレヤ原種愛好会副会長、東京ドーム世界ラン展副審査委員長として活躍。8年前のマレーシア国際ラン展では、国に招待され、ペナンにてカトレヤ原種についての講演を行う。主にカトレヤ原種の栽培と保存に力を注ぐ。

【京都保険医新聞第2651・2652合併号_2008年8月11・18日_6面】

ページの先頭へ