「オンライン請求義務化は違憲」/医師ら960人が国を提訴  PDF

「オンライン請求義務化は違憲」/医師ら960人が国を提訴

 厚生労働省令で2011年4月から完全義務化されるレセプトのオンライン請求をめぐり、全国35都府県の医師や歯科医師961人が1月21日、「省令は営業の自由を侵害するもので違憲」などとして、国を相手取り、オンライン請求義務の不存在確認と1人当たり100万円の慰謝料を求める訴えを横浜地裁に起こした。原告団によると、オンライン請求の合憲性を争う裁判は全国で初めて。

 原告団は同日、横浜市内で会見し、平尾紘一団長(神奈川県保険医協会理事長)は「医師不足が叫ばれる中、医療機関に多大な費用負担を迫るオンライン請求の義務化は許されない」と訴えた。

 訴状によると、原告団は、オンライン請求義務化の問題点について、(1)オンライン請求に対応できない医師・歯科医師の切り捨て、(2)医療機関の負担増、(3)情報漏洩の危険性―の3点を指摘。「オンライン請求の義務化は必要性が認められないだけでなく、デメリットの方が大きい」としている。

 その上で、(1)法律事項であるべき診療報酬請求権の制限を省令で行うことは、国会を唯一の立法機関であると規定した憲法第41条に違反する、(2)オンライン請求義務化は営業の自由を定めた憲法第21条に違反する、(3)オンライン化は、医師から情報漏洩やそれに伴う患者からの損害賠償請求を防ぐための方法の選択権を奪い、医師らの自己決定権などを侵害している―などと主張。オンライン請求の義務は存在しないことの確認と、多大な費用負担を迫られたことなどにより受けた精神的苦痛に対する慰謝料の支払いを求めている。

 保団連が06年8月−08年2月に全国の医師・歯科医師に対して行ったアンケート調査によると、医師の12.2%、歯科医師の7.2%がオンライン請求義務化で「開業医を辞める」と回答。日本医師会が行った同様の調査でも、8.6%の医師が「対応できないため廃院を考えている」と答えている。

 原告の1人で神奈川県保険医協会の入澤彰仁理事は、同日の会見で「無医村地区でやっている病院が廃院になったとして、国民はそれで幸福なのか。われわれの権利を守るということもあるが、国民の健康を考えると、決して許されることではない」と主張。原告団弁護人の小賀坂徹弁護士も「医師不足が深刻化する中でこういうことを強行すれば、国民の医療を受ける権利そのものがますます奪われていくことになる」と述べた。

 なお、神奈川協会では原告団を支援する会のホームページを開設し、引き続き全国の保険医に裁判への参加と支援を呼びかけている。http://www.online-receipt-opposite.com

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